2018年6月9日 (第3243回)
映画を通してみる韓国人の宗教観 -韓国キリスト教会におけるカリスマ運動を中心に-
立命館大学文学部 教授 佐々 充昭
韓国では10年ごとに全国の宗教人口調査を行っています。2015年の調査によると、国民の43.9%が何らかの宗教を信じているという結果が出ました(無宗教は56.1%)。その内訳をみてみると、1位がプロテスタント(基督教)で19.7%、2位が仏教で15.5%、3位がカトリック(天主教)で7.9%となっています。プロテスタントとカトリックを合わせたキリスト教徒の人口が全国民の27.6%を占め、実に仏教信者の約2倍弱の数となっています。
また、最近はアメリカを中心に全世界で勃興しているペンテコステ・カリスマ運動が韓国のキリスト教界にも流入しつつあります。この運動は、三位一体である神(父・子・聖霊)の中の聖霊の働きを重視し、聖霊から賜物(カリスマ)として異言・預言・神癒(神秘的な癒やし)などの力が与えられると信じるものです。この運動に関わる信徒たちは、強烈な回心体験から深い信仰心を持つ反面、他宗教に対して非寛容になり、非キリスト教陣営と深刻な対立や摩擦を生じる傾向にあります。この講演では、『密陽』(イ・チャンドン監督、2007年)や『フェイク-我は神なり』(ヨン・サンホ監督、2013年)等の映画を取り上げながら、キリスト教のカリスマ運動が一般社会に与える複雑な諸様相について読み解いていきます。