2018年9月22日 (第3250回)
ロールズ『正義論』を読む
立命館大学文学部 准教授 林 芳紀
米国の哲学者ジョン・ロールズの主著『正義論』(1971年)は、ロック、ルソー、カントが提唱した社会契約説の発想を現代に甦らせることにより、公正としての正義と呼ばれる社会正義観を打ち立てた、現代政治哲学の古典とも言うべき著作です。その影響力の大きさは、「今や政治哲学者たちは、ロールズ理論の中で仕事をするか、それとも、なぜそうしないのかを説明するかのいずれかをせねばならない」と言われるほどであり、倫理学や政治哲学のみならず、法学、政治学、経済学などの関連諸分野でも、今日至るまで多くの議論を巻き起こしています。しかし、本書は、原著の英語版でも約600ページ、邦訳書では800ページ近くにまで及んでいる大著であるうえに、その文体も重厚かつ難解で、決して読みやすい本ではありません。 そこで、今回の土曜講座では、『正義論』の基本的な発想や要点、さらにはこの本が多くの人々の心を惹きつけてきたその魅力をなるべく分かりやすい形で紹介することにより、正義にかなった理想的な社会とはどのような社会なのかを、皆さんと一緒に考えてみたいと思います。