2019年3月30日 (第3272回)

高齢期の財産の保有・管理と税 -財産をどう守り有効に活用するか?-

立命館大学法学部 教授 望月 爾

 昨年2月に公表された「高齢社会対策大綱」は、全世代による全世代に適した持続可能なエイジレス社会の構築を進めるべく、➀エイジレスに働ける社会の実現に向けた環境整備、②公的年金制度の安定的運営、③資産形成等の支援の3つの政策目標を提示しています。今後急速な少子高齢化が進む中で、高齢者のニーズに応じた雇用や就業機会の提供や、安定的かつ中立的な年金制度の構築や運用に加え、ゆとりある高齢期の生活を確保するための計画的な資産形成や有効活用が求められています。

 また、本年度の税制改正大綱では、「人生100年時代」の到来を見据え、老後の資産形成を支援する税制の見直しを中長期的な検討課題としています。ただし、退職所得や年金所得やそれらを補完する自助努力型の金融商品への課税、保有する不動産や金融資産への相続税や贈与税など検討すべき課題が多岐にわたることから、政府税制調査会を中心に今後2,3年をかけて、その見直しの方向性を議論していくことになっています。

 今回の講座では、そのような高齢期の税の問題について、資産の形成や活用を中心にその現状や課題について一緒に考えてみたいと思います。