2019年3月23日 (第3271回)

相続法改正で何が変わるのか -高齢者の視点から-

立命館大学法学部 教授 本山 敦

 高齢社会が進展し、「終活」「遺言ブーム」「エンディングノート」、相続を「争族」「争続」と呼ぶなど、相続に対する関心が高まっています。

 2018年7月、約40年ぶりに、民法のうちの「相続」に関するルールの改正が行われました。この改正(相続法改正)は、新たなルールの創設や従来のルールの変更など、多くの項目にわたるものです。そして、新しいルールを、実際に使い始めることができる時期(施行日)も複数回に分かれています。その時期は、もっとも早い項目が2019年1月13日から、最も遅い項目が2020年7月10日から、となっています。

 さて、今回の相続法改正の目玉は、何といっても、「配偶者居住権」と「配偶者短期居住権」という新しい2つの権利の創設です。これまでは、「配偶者である」ことを理由として、一方の配偶者に先立たれた他方の配偶者の居住を守るという発想が、わが国の法制度には存在しませんでした。講座では、この2つの「居住権」を中心に、相続人である高齢者(夫が先に死亡した場合の妻、妻が先に死亡した場合の夫)の視点から、今回の相続法改正について、概観します。