2019年5月11日 (第3277回)

東アジアと障害者権利条約 ―中華民国(台湾)の独自の取り組み

立命館大学生存学研究所 教授 長瀬 修

 OsamuNAGASE2006年に国連総会が採択した障害者権利条約はすでに批准数が177に達し、世界的にその実施が推進されています。そして、その実施状況の国際的なモニタリングは国連の障害者権利委員会(委員会)が担っています。すでに東アジアにおいては、中国(香港、マカオ)、韓国、モンゴルの審査が委員会によって行われ、日本は来年に予定されています。しかし、台湾の中華民国政府は国連を脱退しているため、委員会による審査を受けられません。そのため、国内法で独自にこの条約を2014年に「批准」し、実施を進め、その一環としての国際審査を2017年秋に台北で実施し、勧告を出しました。審査を担当した国際審査委員会メンバーにはスウェーデン、英国、カナダ、米国、日本から各一名が中華民国政府によって委嘱されました。全員が個人の資格で参加し、互選によって私は委員長を務めました。国連の委員会においても、審査の中心的役割を果たす国別報告者は、近隣の国の委員が務めることが多いのですが実際、漢字を読めることは、政府訳で「優生保健法」が正確に訳されていないことを指摘する際に役立ちました。日本の審査に向けて、台湾の審査から学びたいと思います。