2019年4月27日 (第3276回)

京町家で『つながり』を回復する —「はんなり」とした障がい者就労支援の試み-

NPO法⼈Salut(サリュ)(就労継続支援B型事業所)理事長 吉川 陽子

 サリュは、17年前に精神科医・看護師によって「男性がいる空間や、男性が苦手な女性たちに安心できる場所を提供したい」という思いから、二条城近くの京町家で女性精神障がい者のみを対象とした共同作業所を開始しました。   

 創設時のコンセプトは「与えられた家族ではなく、つくっていく家族」というものでした。なぜ、そのようなコンセプトになったかというと、私たちがごく普通の家庭を想像した時、家は安心できる、ホッとできる場所だと想像するかもしれませんが、男性からの暴力、病気や障害に対する家族からの無理解等によって、家庭で安らぐことができない場合があります。そういった背景をもつ女性らの回復に必要なものは「安心できる居場所」と「確たる自分の再生」でした。そして、傷ついたもの同士が病気や障害でつながるのではなく、「ものづくり」による支え合いや教え合いによって “ひとと人”とが自然につながることを期待して、創設時から一貫して手仕事を行ってきました。

 17年目を迎えた今、サリュを卒業した利用者は、一般就労したり、大学へ進学したり、それぞれのひとが希望する人生を歩まれています。そして、サリュは居場所という枠組みをはるかに超え、手仕事からうまれた商品によって、ひと・暮らし・地域をつなぐ場へと変化してきています。     

 今回の講座では、サリュが行ってきた17年間の実践について利用者と共にご紹介させていただきたいと思っています。