2019年4月20日 (第3275回)

がんをめぐる文化 ―韓国におけるフィールドワークを中心に―

立命館大学総合心理学部 准教授 澤野 美智子

 生物学的に見たとき、がんは人類に共通して見られる疾患です。しかし時代や地域によって、病気の受け止め方や対処の仕方は異なります。人々が病気をどのように捉え、治そうとするのかを見ることで、その社会のありかたや文化的な背景が見えてきます。     

 近年のがん患者数の増加は日本だけでなく韓国でも見られ、人々の大きな関心事になっています。病院でのがん治療だけ見ると、日本と韓国の間で大きな違いはありません。しかし、がん告知をどのように受け止めるか、がんになってまず誰に何を相談するか、病院をどのように決めるかというところから始まり、治療中はどのように過ごすか、誰からどのようなお見舞いやサポートを受けるか、治療を契機に周囲の人々との関係はどのように変化するか、治療後の生活はどうしているかといった日常生活の細部に至っては、文化的な違いが見られます。本講座では、韓国のがん患者たちの日常を描き出し、その文化的背景を探ります。