2019年6月29日 (第3282回)

環太平洋地域とアフリカ諸国をつなぐシェアの思想 —タンザニア人交易人を事例に-

立命館大学先端総合学術研究科 教授 小川 さやか

 今世紀に入り、世界各地から中国・香港へと零細な交易人たちが押し寄せ、国境を超えるインフォーマル交易が活性化しました。彼らは、知的財産権や入管法等に違反しながら、中国・香港でコピーや模造品、中古品を含む様々な商品を仕入れ、母国へと輸出する自律的な交易システムを形成しています。私はなかでも、タンザニア人交易人・ブローカーの経済活動について研究しています。タンザニア人交易人・ブローカーのなかには、中国・香港のみならず、新しい市場を求めて東南アジア諸国にも果敢に乗り出していく者もいます。 彼らは、ICTや電子マネーを活用して、環太平洋地域とアフリカ諸国とをつなぐ独自の地下銀行システムや商取引のプラットフォームを構築しています。

 本講義ではこのような環太平洋地域とアフリカ諸国をつなぐ独自の交易システムが、先進諸国で注目されているシェアリング経済の思想と重なりつつ、いかにして生き馬の目を抜くような海外の市場で零細な交易人たちが生き抜いていくための独自のセーフティネットとなっているかについてお話しします。そこからテクノロジーの発展に伴う経済文化の変革に対峙するヒントを提示できたらと思います。