2019年7月20日 (第3285回)

中国の「一帯一路」構想と世界経済

立命館大学国際関係学部 教授 中川 涼司

 中国の「一帯一路」構想と世界経済に関してお話します。書店に並ぶ中国経済の本では、中国は次の覇権を狙う強国としての経済大国として描かれることもあれば、問題山積の崩壊寸前のように描かれることもあります。いずれも本を売るためのマーケティングとしての性格が色濃く、かなりの誇張があることが否めません。

 そこで、まず中国経済の世界的ポジションについて、データをもとに確認をします。ついで、「一帯一路」構想に関して、事例研究を交えながらその実像に迫りたいと思います。「一帯一路」に関しても同じように様々な評価がされています。「一帯一路」構想は中国国内向けには「中国の夢」の実現構想として位置付けられていますが、西側諸国においては覇権構想としてとらえられることも少なくありません。とくに、スリランカにおいて、債務返済の一環としてハンバントタ港の99か年の租借権を獲得したことから新植民地主義との批判も出ています。マレーシアでも対中借款に大きく依存するプロジェクトの見直しなども進められています。その一方で、中国からの投資を関係する国々もあります。そこで、「一帯一路」の実態をとくに経済的インパクトに焦点を当てつつ、モルジブ、カンボジア、スリランカ、パキスタン、東欧などの事例を取り上げて検討します。