2019年7月27日 (第3286回)

中国の「一帯一路」構想と世界秩序

立命館大学グローバル教養学部 准教授 廣野 美和

 現在の世界秩序は、第2次世界大戦の終焉を迎えると同時に米国が中心となって打ち立て、存続させてきたものである。国連やIMFの設立などに見られるように、現在の国際政治経済を支える根本的な制度や、自由民主主義や自由貿易の価値観や規範が、現在の世界秩序の根幹にある。しかし、中国に批判的な論者の中には、中国が「一帯一路」構想の中で世界各地の途上国にインフラ投資をし、影響力を拡大させ、ひいては米国を凌ぐ国際的地位と地政学的パワーを獲得することにより、世界秩序を権威主義的な体制に変えていくのではないかとする議論もある。しかし、このような議論は、現在においては推測の域を超えておらず、また中国共産党、中国政府、中国企業といった主たる組織の視点からみると、世界秩序の過度の変革は必ずしも彼らに利益もたらすとは限らない。中国の一帯一路が世界秩序にどのような変化をもたらすのかについては、まず中国は「世界秩序」をどのように定義しているのか、また、現在の「世界秩序」が中国の様々な組織にもたらす利益・不利益は何かを証拠に基づいて考えることが必要である。