2019年8月24日 (第3287回)

満蒙開拓団の歴史は問いかける -戦後日本社会と地域-

立命館大学経済学部 准教授 細谷 亨

 満蒙開拓団については、一般的には、山崎豊子氏の小説『大地の子』でよく知られていますが、学術的な面では、地域からの開拓民の送り出しや満洲現地での農業経営・他の民族との関わり、引き揚げ後の生活再建など、その実態については未だよくわかっていないことが多いのが実情です。私たちは、敗戦時の逃避行や集団自決、残留孤児などの悲劇的結末を忘れてはなりませんが、それだけでなく、開拓民の戦時と戦後の経験を明らかにし、歴史のなかに位置付ける必要があります。  

  今回の講座では、主に農村から送り出された満蒙開拓団の背景・実態をふまえたうえで、開拓民・引揚者と地域・コミュニティや戦後日本社会との関係について考えてみたいと思います。具体的には、敗戦後、引揚者はどのように地域に迎えられたのか、地域の対応と引揚者の生活再建過程について検討していきます。満蒙開拓団とその戦後史は、敗戦後から現在に至る「地域づくり」を考えるうえでも、重要な手がかりを私たちに与えてくれるでしょう。