2019年10月5日(第3289回)

日韓「過去の克服」を考える 「徴用工」問題は日韓請求権協定で解決済みか

同志社大学グローバル・スタディーズ研究科 教授  太田 修

 2018年10月に、元韓国徴用工(以下、韓国強制動員被害者)問題への韓国大法院(最高裁)判決が出されました。判決は、原告の韓国強制動員被害者らの損害賠償(慰謝料)請求権は、1965年の日韓財産請求権協定では解決されなかった、とする内容でした。これに対して日本政府は、日韓財産請求権協定で「解決済み」だとして判決を批判し、「国際法違反」、「日韓関係を根底から覆す暴挙」、「無礼だ」など反韓ナショナリズムを煽るかのような発言を続けました。日本の大手メディアも日本政府の「解決済み」論を支持する主張を掲げ、「解決済み」論は日本社会を覆ってしまったようです。今回は、近年あらたに公開された日韓国交正常化交渉(日韓会談)関連文書を読むことによって、「解決済み」論の形成過程を検討し、「解決済み」論の何が問題なのか、韓国大法院判決はなぜ未解決だとしたのか、「解決済み」論で「過去の克服」はなされたのか、など韓国強制動員被害者問題を歴史として考えてみたいと思います。