2019年10月12日 (第3290回)

元徴用工韓国大法院判決と徴用工問題解決に向けた取組について※台風接近のため中止します。

かわかみ法律事務所 弁護士 川上 詩朗

  徴用工に関する韓国大法院判決は、「国際法に違反する」などと激しく非難されています。しかし、大法院判決はそれほどおかしな判決なのでしょうか。  

 植民地支配下で、騙されるなどして日本に動員され、賃金も支払われずに過酷な労働を強いられた被害者が、無償労働を強いた日本企業を相手に、慰謝料の支払を求め、それが裁判で認められたというのが今回の判決です。政治的に救済されない被害者「個人」の権利が、司法的に救済されることは、三権分立・法の支配の下当然予定されており、司法府が「人権保障の最後の砦」としての役割を果たしたといえます。  

 徴用工問題は日韓請求権協定2条(65年協定)で解決済みであるとの見解があります。しかし、そこで解決したのは国家自ら処分可能な外交的保護権についてであり、個人賠償請求権は消滅していないというのが日本政府の立場でもあります。65年協定では未解決とされた個人の慰謝料請求権問題が顕在化したのに対して、65年協定で解決済みと繰り返しても真の解決は実現できません。  

 それではどのように解決すれば良いのか。被害者個人の人権救済の視点(被害者中心アプローチ)から、解決の道筋について考えてみたいと思います。