2019年12月7日 (第3297回)

オリンピアン・パラリンピアンにとっての真正性 ー観光学の視点からー

立命館大学文学部 客員教員・ 京都文教大学 名誉教授 橋本 和也

  「オリンピアン・パラリンピアンにとっての真正性 ―観光学の視点から」

 観光学・観光人類学の視点からオリンピック・パラリンピックをみると、この世界的な競技大会の興味深い側面があきらかになる。アスリート・パラアスリートも旅行者であり、国家を越えて「他者」と出会う旅路の経験を楽しむという側面を指摘できる一方で、「身体の商品化」という側面もある。商品化・ビジネス化の進行とともに「ドーピング」の問題が浮上し、かれらアスリートにとっての「真正性」とはなにかが議論されることになる。  

 観光学の領域で議論される「真正性」の視点から、スポーツの領域における「真正なるアマチュア精神」や「イコールコンディションの確保」という理想を見直すと、アスリートの身体のみならず競技大会自体が「商品化・ビジネス化」している現状においては、「誰が真正なアスリートか」、なにをどうすればスポーツにおける「イコールコンディションの確保」が可能になるかという問題に突き当たる。  

 「真正なアスリート・パラアスリート」の実現の難しさを指摘するだけでなく、新たなスポーツの在り方と楽しみ方について考えてみたいと思っている。