2020年3月7日(第3305回)

健康の不衡平ー地域と医療現場での取り組みを考える

立命館大学産業社会学部 教授・ 立命館大学人間科学研究所 所長 松田 亮三 

 健康の不衡平という言葉は初めて目にされる方も多いと思います。一人一人の健康状態はいろいろな理由で違いますが、特に貧困や孤立など社会的要因を背景として健康状態の違いがあることを、健康の不衡平と言います。不衡平というのは適切なバランスに欠けているという事で、社会的な不利が不健康に結びつくのはおかしいのではないか、という考え方が背景にあって用いられる言葉です。

 貧困や労働・生活上の問題が病気と結びつき、不健康を招くという悪循環は、工業化が進む中で多くの国で課題とされたものであり、決して新しいものではなく、長い研究・実践の歴史があります。そして、社会・経済格差が重要な課題として浮上してきている日本において、改めてこれを考え直すことは重要になっています。

 今回の講座では、この考え方について実例を示しながら説明し、地域で、特に医療や福祉の場面でどのような取り組みができるのかを、日本と米国などの取り組みを参考にしながら考えてみたいと思います。