2020年12月19日 (第3329回)

新型コロナウイルス感染症以後の「新たな観光様式」 ――リアルとバーチャルの「あわい」

二松學舍大学 文学部 教授 松本 健太郎

 COVID-19以後、各国では渡航禁止や国境閉鎖、都市封鎖や自粛要請などの政策がとられ、人びとの移動が著しく制限される事態が発生した。そして観光地への物理的なアクセスが難しい状況下で、観光事業者は様々な形で「バーチャル観光」のコンテンツを制作し、それを人びとに提案した。むろん昨今では、「ある体験」がその本来のものとは別の技術的文脈のなかでシミュレートされ再構成される、という構図が散見されるようになっていた。たとえばテニスをプレイするという体験がゲームのなかで技術的に再構成される。映画をみたりラジオを聴いたりする体験がスマートフォンのアプリをつうじて再構成される。これら「体験の技術的合成」といいうる構図の延長線上で、コロナ禍における「オンライン〇〇」「リモート〇〇」「バーチャル〇〇」の量産を捉えることができる(「バーチャル観光」もその一例といえる)。 今回は「バーチャル観光」のコンテンツに加えて、位置情報ゲームとしての『ドラゴンクエストウォーク』、観光地のフォトスポットにおけるセルフィなどを題材としてとりあげながら、人びとの移動をめぐるコンテクストに介入する各種のテクノロジーやモノの役割を考えてみたい。