2020年12月12日 (第3328回)

ウィズ=アフターCOVID-19の観光――その可能性と課題

立命館大学 文学部 教授 遠藤 英樹

 現代社会は、人、モノ、資本、情報、データ、イメージ、観念、技術等がたえず移動する世界を現出させた。だが、現代の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大の状況では、国境を越えていくようなモビリティなどなくなったのではないか、と思う人がいるかもしれない。その通りである。しかし、だからこそ現代はモビリティの時代だと言えるのだ。現在のように観光をはじめ人のモビリティがとまってしまっているのは、ウイルスが世界中を移動し、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)がパンデミックに流行してしまったためである。そして、そのように新型コロナウイルス感染症(COVID-19)がグローバルなかたちでパンデミックに流行したのは、人やモノのモビリティを介してなのである。いわば観光は世界に対して、ウイルスによるリスクを贈与(ギフト)したのである。では観光は、もはや、ないほうが良いものなのか。実は観光には、今後の社会を形成するうえで重要な可能性が秘められている。そこで本稿は、観光が今後、①「どのような形態をもつようになるのか」、②「そのなかで、どのような意義をもつのか?」を考える中で、「贈与」「地域」「デジタルテクノロジー」をキーワードとして、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)以後の観光の可能性を描写したい。