2020年11月14日 (第3327回)

子どものバイリンガルの心理

神戸松蔭女子学院大学 人間科学部心理学科 教授 久津木 文

 日本の人口減少が止まらないなか、外国から労働のために来日する人たちが増加しています。これと同時に、家庭と社会で使用する言語が異なる環境で育つバイリンガル、もしくはマルチリンガルの子どもも増加しています。お母さんは外国語を話しているのに子どもは日本語で返していたり、二つの言語をまぜて話す親子連れを普段の生活で見たことはないでしょうか。こういった、親の言語と日本語(社会の言語)を聞いて育つ子どもは増えています。このような子どもたちはどのように二言語を獲得しているのでしょうか。

 二つ言語があると子どもの負担が大きすぎるので、一つはあきらめるべきだという考え方も一昔前には存在しました。しかし、現在(主に海外)の研究では、幼少期の二言語獲得の認知的なメリットが報告されています。単にもう一つ言語が話せるから得だということではなく、二言語を獲得したり使用する経験が認知的ならびに心理的な発達を促す可能性が主張されるようになりました。

 この講座では、二言語獲得の経験が子どもの心や認知の発達にどのように影響するかについてお話したいと思います。