2021年4月24日 (第3332回)

「ムスリムの食の多様性  ーーハラールの解釈や実践と食嗜好」

立命館大学食マネジメント学部 教授 阿良田 麻里子

 ムスリムの友をもてば、きっと飲食のハラール/ハラームの問題を意識することになるでしょう。イスラーム法において許された物事をハラール、禁じられた物事をハラームといいます。有名な酒や豚だけでなく、動物の屠畜の方法や、豚由来の食品添加物など、さまざまなものが問題になりえます。

 なにも知らずにいると、せっかくのお客様に食べられないものばかり出してしまって、後悔することになるかもしれません。逆に、すこし調べるとハラール認証という厳しい制度の諸問題に接し、ムスリムへの食の提供が困難を極める専門技術であるかのように誤解して、途方に暮れてしまうかもしれません。

 けれどもムスリムの人々は、修行僧のような禁欲生活を送っているわけではなく、私たち非ムスリムと同じようにおいしい食べ物を楽しんでいるし、日本食を楽しみに来日する外国人ムスリムも大勢います。またハラールの解釈や実践には、地域差も個人差もありTPOによって使い分けられる場合もあります。今回は、どうすれば、今ここにいるムスリムの友人に対して、配慮不足にも過剰防衛にも陥ることなく、安心できる食べ物を提供し、親しく飲食をともにすることができるのか、考えてみたいと思います。