2021年5月15日 (第3333回)

コミュニティのつながりの中で老いが輝く  ~長寿地域「京丹後市」と「奄美群島」の事例から~

一般社団文化政策・まちづくり大学校 (略:市民大学院)講師
立命館大学産業社会学部非常勤講師 立命館大学地域健康社会学研究センター客員研究員 冨澤公子

 超高齢社会のわが国では、老いは「長すぎる老い」として、加齢による身体機能の低下に注目され、介護負担増大や認知症、社会保障費の増大など負の側面から悲壮感をもって受け止められている。このままでは、世代間の利害対立すら懸念されます。

 しかし、「ネガティブな老い」の見方に対して、健康で長寿な方々の「叡智や生き方」から私たちが学び、互いの心を通わせ、ともに健康長寿の方法を考える道もあります。世界の長寿地域の研究動向では、長寿者が満足度の高い生活を送っている実態が明らかにされています。

 近年では、生涯にわたる人間発達の視点から、加齢に伴って身につけられた潜在能力の高さや地域社会への影響力、歳を重ねるとともに増大する幸福感などが解明されています。

 さらに、伝統行事が継承されている地域では、長寿者は祭りや儀式などの技を次の世代に引き継ぐ役割を担い、そのような役割が健康長寿の源となって自律した生活を支えています。

 本講座では、わたくしが、長年、長寿と人間発達の新老年学を開拓してきた研究成果として、心理学、新老年学、社会学、経済学など学際的な知見を総動員し、長寿を実現する地域コミュニティとそこに機能する諸要因について、健康長寿者の多い長寿地域である「京丹後市」と「奄美群島」のコミュニティを事例に明らかにします。