2022年3月5日(第3353回)

西園寺文庫の「御会集」

立命館大学文学部 教授 川崎 佐知子

 立命館大学図書館西園寺文庫は、西園寺家から寄贈された図書類を基盤とする蔵書群です。そのなかには、江戸時代の天皇や上皇が主催した和歌御会の記録「御会集」がまとまった数存在し、コレクションの特色をなしています。「禁中並公家諸法度」により政治への関与を抑止された朝廷では、学問としての和歌が盛んでした。正月の御会始、七夕、重陽などの年中行事的な御会においては、定められた題を廷臣が詠み、懐紙に清書しました。稽古のために毎月決まった日に執り行われる月次御会では、予め触れられた題を詠む兼日や、当日に題を探って詠む当座などがおこなわれました。これらが、「いつ(日時)」「誰が(主催)」「何のために(目的)」「どのようにして(役者・参加者・歌題・和歌)」実施されたのかを記すのが「御会集」です。個々の作者が自筆で書いた詠草(草稿)や懐紙、短冊などに比べれば、資料としての希少性には乏しいかもしれません。しかし、「勅撰和歌集」が編纂されなくなって久しいこのころ、「御会集」は堂上歌人の和歌活動の体系的把握にきっと役立つことでしょう。かつての清華、西園寺家のおもかげをここにみることができるかもしれません。