2006年9月30日 (第2788回)

アート映像は現実へのまなざしから

国立民族学博物館民族文化研究部・ 教授 大森 康宏

 劇映画を制作するには多くの経験的イメージにもとづくことが多いとされる。そのためか制作者は記録映画制作を経験したものが多い。

 記録映像は、多くの観察によるイメージの蓄積のもとにアイディアを構成して完成されている。まさに多様な視覚体験によって映像が完成されてゆく。したがって若い映画制作者は事実の観察よりもアイディア発想の奇抜さで演出しようとする。

 人に見てもらう映画、現実の構成と演出構成の映像、どんな関係があるか、実際を見てみよう。またこうした人類の遺産である映像記録をどう保存し、活用するのかも考えてみたい。なぜなら制作した映像は作品として、その歴史的存在価値が発生するのは、現在か遠い未来にやってくるかすぐには判明しないからである。