2023年7⽉15⽇

寺山炭窯跡の災害と復旧

鹿児島市教育委員会 文化財課世界遺産保全係 主査 藤井 大祐

 寺山炭窯跡は鹿児島市郊外の山中に所在する幕末の遺跡です。この遺跡は、2015年7月に世界文化遺産に登録された「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」の構成資産でもあります。

 2019年7月に背後の斜面が崩壊し、大量の土砂や樹木が流入したことにより炭窯遺構の内部が埋没するとともにその衝撃で石積の一部が崩れました。

 被災前の炭窯遺構は、石積の中腹が前にせり出す「孕み出し」が進行しており、災害によって崩落した石材を積み直すだけでは安定性を保てないという問題がありました。

 また、被災後にはコロナ禍を迎え、観光客数や税収が落ち込む中、これまで以上に事業効果や復旧後の寺山炭窯跡のあり方を強く意識しながら取り組む必要もありました。

 今回の土曜講座では、そのような状況の中で寺山炭窯跡の災害復旧にどのように取り組んで来たのかについて報告します。寺山炭窯跡の災害復旧はまだ続いています。この講座が、寺山炭窯跡やその災害復旧の取り組みを知っていただく契機となれば幸いです。

 鹿児島市教育委員会

地盤災害グループ歴防20年の歩み

立命館大学 理工学部 特命教授 深川 良一

 立命館大学・地盤災害グループは、2003年度よりスタートしたCOE研究プロジェクト「文化遺産を核とした歴史都市の防災研究拠点」において、豪雨時の土砂災害、地震時の斜面崩壊等の地盤災害を主対象とする研究を推進した。主な研究フィールドとしてまず京都東山の清水寺を選定し、斜面表層部の水分量計測データに基づいて境内斜面の安定性評価および崩壊予測法の開発に取り組んだ。また、境内斜面では1m深地温探査、地中音探査、電気探査などによる地下水調査を実施し、斜面内の地下水帯や水みち等に関する重要な知見を得た。

 地盤災害グループは、東日本大震災時の仙台城石垣被災調査、紀伊半島災害時の熊野古道被災調査、熊本地震時の通潤橋被災調査、京都府与謝野町加悦伝建地区および兵庫県豊岡市出石伝建地区における地盤防災対策提案、タイのアユタヤ仏塔被害調査等にも取り組んだ。