2023年9⽉16⽇(第3386回)

京焼登り窯の新研究2-3D計測で⾒る登り窯-

埼⽟県⽂化資源課 (早稲⽥⼤学⽂化財総合調査研究所) 主任(客員研究員) ナワビ⽮⿇

 京都市内には、かつて京焼を焼いていた登り窯が点在している。最盛期には五条坂を中心に陶工が集まり、多くの登り窯が築かれ、時代に応じた様々な作品が焼成された。しかし、1970年代には窯の火が消えて以来、その記憶とともに失われつつあり、保護を講じるべき近現代の遺跡であるといえる。私自身、調査に参加する2018年まではその存在を知らず、京都の街中に突如現れる登り窯の迫力に圧倒された記憶が新しい。

 発掘調査や聞き取り調査など、登り窯の構造や歴史を検討するにあたり、その基礎的な情報の記録は必須である。しかし、登り窯のように複雑な構造をもつ立体物を記録する場合、従来の二次元的な方法では限界がある。そこで、複数枚の写真から三次元情報を復原する技術を用いることにより、登り窯の3Dモデルを作成することに成功した。フォトグラメトリとも呼ばれるこの技術は、その情報量の多さや導入が比較的容易なことから、新たな考古学調査・研究の手法としても注目されている技術である。

 本講座では、登り窯の計測調査の実践とその成果について報告するとともに、文化財の保存と活用に3Dデータがどのように寄与するかを考えていきたい。