2023年11⽉4⽇(第3390回)

刑罰って何を解決しているの︖ - 刑罰制度改⾰をRestorative Justice (修復的司法)のレンズで⾒てみる

⽴命館⼤学法学部 教授 森久 智江

 「犯罪行為に刑罰で対応する」ということに、多くの人は疑問を抱いていないのではないでしょうか。しかし、刑罰を科すことで犯罪という現象がどのように解決されているのか、その仕組みはどうなっているのでしょう?

 現在、日本では刑罰制度が大きく変わろうとしています。2022年の法改正により、従来の懲役刑と禁錮刑の区別がなくなり、新たな「拘禁刑」が導入されます。また、2000年代以降、刑務所に高齢や障がいのある受刑者が相当な割合を占めることへの対応として、日本の刑事政策における重要課題として「再犯防止」が掲げられ、司法と福祉の連携といわれる新たな政策が広がってきました。近時の法改正においても、刑罰の中で様々な社会復帰支援を充実させていくことが企図されています。しかし、「社会復帰」とはどのようにして果たされるものなのでしょうか。さらにそれは、社会に生きるわれわれにとってどのように位置付けられるものなのでしょうか。

 本講義では、このような近年の日本の動きを修復的司法(Restorative Justice)という考え方から考えてみたいと思います。