2023年12⽉9⽇(第3392回)
観光と文化遺産 -リスクになりうる/リスクを回避しうる観光-
立命館大学文学部 教授 山本 理佳
開発か保護か―観光と文化遺産はこのような二項対立的な関係性でとらえられることが多い状況にありました。これらには、観光開発で(文化遺産が)取り壊されてしまったり、開発優先のために大幅に改変されてしまうことも含まれます。最近では開発のみならず、観光という現場において様々に生じる諸問題(観光公害)が建造物の劣化や痛みなど、文化遺産に負の影響をもたらすとされることも多くなっています。それらは文化遺産にとって「リスク」になりうるものとしてとらえられます。一方、近年では観光地(ホスト)側での様々な取り組みにより、文化遺産にとっての「リスク」を色んな形で回避しうる観光のあり方が生み出されています。たとえば文化遺産をめぐる観光行動の適切な管理、文化遺産への適切な理解や保存への協力姿勢の醸成、といったことが行われています。講演では、こうした文化遺産の「リスク」をめぐる観光現象・営為について示しつつ、各地の現状・取り組みについて紹介したいと思います。