2026年1⽉17⽇(第3439回)

優生政策とリプロダクティブ・ジャスティス

立命館大学先端総合学術研究科 特任教授 松原 洋子

 「優生政策」とは、社会にとって「望ましい」とみなされる子孫を増やし、「望ましくない」とされる子孫を減らすことを目的に、法律や社会制度を通じて人の生殖に介入する政策を指します。前者は「積極的優生学」、後者は「消極的優生学」と呼ばれます。2024年には、消極的優生学を推進した優生保護法に対し、最高裁が違憲判断を示しました。優生保護法は敗戦直後の1948年に制定され、1996年に母体保護法へ改正されるまで、優生上の理由による多数の強制不妊手術や人工妊娠中絶を可能にしてきました。「優生」が介入する生殖をめぐる問題は日本だけでなく世界各地で生じており、生殖の自己決定を実質的に保障する環境を求める「リプロダクティブ・ジャスティス」の概念も提起されています。性や生殖に関わる困難は、個人や家族の問題にとどまらず、社会構造そのものと深く結びついています。

 本講演では、「優生政策」を手がかりに、歴史学と生命倫理の視点から、生殖に関わる権利と社会正義について考えていきます。

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