2007年1月13日 (第2799回)

今日の社会と心理臨床家の役割 ―不登校問題への取り組みを切り口に―

応用人間科学 研究科教授 高垣 忠一郎

 今、世の中では「心の時代」「心のケア」「心の教育」などと盛んに「心」が強調され、注目を浴びている。マスメディアによる青少年の「心の闇」「心の病理」をことさらに強調する事件報道も目に付く。臨床心理士やカウンセラーになりたいという若者達も増えている。こういう現象を社会の「心理主義化」として批判的にとらえ、危惧する人々もいる。

 教育基本法や憲法を変えようとする動きも今まさに進行中である。それに連動して「愛国心」と強調する勢力が存在する。それに対して「心を戦争へと動員する」ことを阻止して、平和憲法を守ろうとする流れも強まっている。まさにある意味では「心」をめぐる綱引きが行われているようにもみえる。こういう社会情勢の中で、心理臨床家(カウンセラー)は自らの役割をどのように位置づければよいのか?

 長年、不登校問題に取り組んできた者として子どもたちの問題を通じて見えている者を語りたい。