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サトウ タツヤ 先生(総合心理学部)

2021.10.01

サトタツ学部長が心理学を学ぶ君たちに読んで欲しい本

 今回、本を推薦するにあたって大きく6つのジャンルを設定しました。
 ①高校生くらいまでに影響を受けた作品群、②視点が面白いなぁと感心した作品群、③心理学者としての私を鍛えてくれた作品群、④私自身の著作、⑤私のもとで成長してくれたかつての院生たちの著作、⑥他の世界を教えてくれるノンフィクション(マンガを含む) です。つまり、私という研究者がどのように作られてきてどのような活動をしているのか、を振り返ってみたということになります。一冊でも興味のある本を手に取って欲しいと思います。


『裸の王様』
開高健著
『開高健短編選』(岩波文庫)所収
大岡玲編(岩波書店、2019年)

これは、高校受験ぐらいの時に、様々な試験問題に使われていて興味をもったので、小説そのものを読んでみようと思って読んだ本です。絵画塾に通う太郎君とその先生の関係が中心でありつつも、今読み返してみると大人じゃないと分からない男女の機微が書いてあったりします。

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『テロルの決算』新装版 (文春文庫)
沢木耕太郎著(文藝春秋、2008年)

高校生か大学生頃に読んだ本。実際にあったテロル(社会党委員長刺殺事件)についてのノンフィクション。テロルというのは許される行為ではないが、殺人者の事情、被害者の事情が一点に交わるまでの文脈と、その瞬間を描き、その後、それぞれに与えた影響を丁寧に描いたという点でスリリングな本です。

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『音楽』改版(新潮文庫)
三島由紀夫著(新潮社、1990年)

高校生のとき、私は漠然と近くの経済学部に進学するものと思っていました。それが、この小説を読んで、心理学に興味を持つことになりました。思い返せば、それ以前から関心を持っていたのですが、この本を読んでから、具体的に心理学専攻がある大学を受験しようと決めたのです。内容は、精神分析に関するものでどこまで理解していたのかは不明です。とはいえ、心理学を学ぶ方向への最後の一押しを与えてくれたという意味で人生に大きな影響を与えた作品です。

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『メンバーチェンジの思想:ルールはなぜ変わるか』
中村敏雄著(平凡社、1989年)

スポーツルールの違いから文化論までを論じている本で、刺激的です。なぜ(イギリス発祥の)ラグビーやサッカーのメンバーチェンジは人数が限られているのに、アメリカンフットボールのメンバーチェンジは大胆に行うことができるのか。ルールが変わるということ、それが文化に影響され、また文化にも影響を与えているということがわかり、ルールとは何か、ルールに従うとは何かということを深く考えさせてくれます。

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『豊臣秀長:ある補佐役の生涯』上・下(文春文庫)
堺屋太一著(文藝春秋、1993年)

私が高校生の頃は豊臣秀吉に弟がいてその補佐ぶりが文武両面で優れたものであったこと、その秀長が亡くなったことが、豊臣政権の箍(たが)が緩むきっかけでもあったことなどは、全く知りませんでした。この作品は、史料の発見ではなく、それなりに知られていた人物に新しい息吹を与えたという意味で「発見」と言えるかもしれません。

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『昭和天皇の妹君:謎につつまれた悲劇の皇女』(文春文庫)
河原敏明著(文藝春秋、2002年)

題材は皇室もの、と言えますが、文化的圧力による親子の離別の物語です。日本では、男女の双子の誕生は忌むべきものとされていたため、大正天皇夫妻に誕生した男女の双子のうちの女子が、他家で育てられた、という仮説について取材を重ねたノンフィクションです。著者は批判するのではなく事実を明らかにするというスタイルで取材を進めます。結局、真実は明らかになりませんが、傍証を重ねていくことで、真実に最大限に迫ったと言えます。

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『昭和16年夏の敗戦』(中公文庫)
猪瀬直樹著(中央公論新社、2010年)

敗戦に終わった先の戦争について、政府や軍はちゃんと検討や準備をしていたのか?と疑問をもちますが、シミュレーション(図上演習)もしっかりやっていたそうです。ただし、その結果は日本の敗戦と予想されたとのこと。それなのに、組織としての日本は、戦争に突き進んでしまい、歴史の審判もくだされた。組織と人間について考えさせてくれます。

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『エスノメソドロジーとは何か』
K.ライター著(新曜社、1987年)

修士論文を書いた後、研究の方向性が定まらない時期に東京都立大学生協の書店でふと手に取った本。エスノメソドロジーという語は全くわからなかったが、私たちの当たり前を支えるために人々(エスノ)が用いている方法(メソドロジー)を分析するというスタイルが斬新でした。会話分析や期待破棄実験などに魅了され、院生時代の私を活性化させてくれた本です。

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『知能の発達と評価:知能検査の誕生』
A.ビネー、Th.シモン著(福村出版、1982年)

心理学が社会に与えた影響のうち最大のものの一つが知能検査であることは疑いありません。時に差別と結びつき批判もされました。しかし、その開発者たちは、子どもの姿をありのままに捉え、それぞれの子どもにあった教育や支援が与えられるべきだと考えてその方法を作り上げていました。その真摯な態度に感動します。知能検査を一度でも使ったことのある人は必ず読みましょう。

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『人間の測りまちがい:差別の科学史』増補改訂版
スティーヴン・J・グールド著(河出書房新社、1998年)

知能を科学的に測定できるという主張が差別や断種に使用されたという事実にどのように向き合うべきか。そもそも知能の測定とはどのような論理に基づいているのかを丁寧に解説しています。

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『夜と霧』新版
ヴィクトール・E・フランクル著(みすず書房、2002年)

タイトルを直訳すると『それでも人生にYESと言う―― ある心理学者、強制収容所を体験する』。心理学領域における最も読むべき本。著者は「私は何のために生きているのか?」ではなく、「あなたが生きることが、あなたに対して期待していることは何か」を問うべきだと述べています。迷わず手に取り読み始めましょう。

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『パーソナリティの理論:状況主義的アプローチ』
ウォルター・ミッシェル著(誠信書房、1992年)

著者はマシュマロ・テストで有名になった心理学者。人間の内部に「性格なるもの」があって、それが原因となって、人々が一定の傾向の振る舞いを行うというロジックを疑い、性格は変わりうるものだと説いています。心理学者としての私の根幹を作ってくれた本です。

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『変態心理』復刻版
日本精神医学会編(1917年10月~1926年10月)

変態と聞くと血が騒ぐかもしれませんが、大正時代はAbnormalを変態と訳していました。つまり異常心理学に関する本です。今に通じるマトモな話もあれば、今から見れば不思議な話もあります。

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『知能指数』(講談社現代新書)
佐藤達哉著(講談社、1997年)

私が初めて出版した本。IQで頭の良さがわかるのか?という疑問に対して、知能検査の歴史を丁寧に掘り起こし、何が知能検査の本来の考え方なのかを示した本です。簡単に言うと、IQという指標が抽象的なアタマの良さを捉えていると考えることはできない、ということになります。。

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『日本における心理学の受容と展開』
佐藤達哉著(北大路書房、2002年)

私が東北大学に提出した博士論文。心理学史の方法論に基づき一次資料を掘り起こして書いた日本の心理学史。厚すぎて誰も読んでくれません。。。まず、手に取って重さを感じてください。読み始めると眠くなりますので、不眠気味の方におすすめです(自虐)。

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『TEMではじめる質的研究:時間とプロセスを扱う研究をめざして』
サトウタツヤ編(誠信書房、2009年)

今では、日本発の質的研究法として知られるようになったTEM(複線径路等至性モデリング)は、立命館大学のシンポジウムでの研究発表がきっかけでした。TEMができあがった経緯やフレッシュな初期の研究を読んでみてほしいと思います。

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『あなたはなぜ変われないのか:性格は「モード」で変わる 心理学のかしこい使い方』(ちくま文庫)
サトウタツヤ、渡邊芳之著(筑摩書房、2011年)

性格が変わらないと思うことは錯覚なのだということを一般向けに書いた本です。共著者は私の大学院の同級生でありSNS著名人ラジ。この友人と共に知的活動を続けられてきたことに感謝したいと思います。

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『図解心理学のことが面白いほどわかる本:本当のことがホントにわかる!』
渡邊芳之、佐藤達哉著(中経出版、2000年)

心理学という学問の根底にある考え方を平易に説明しつつ、決して俗流心理学にならないようにバランス良く書いた本。心理学のことを知りたいという方におすすめ。中国と韓国で翻訳されて出版されています。

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『心理学趣談』
渡辺芳之、佐藤達哉著(中信出版社、2001年)

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『유쾌한 심리학: 생활 속의 심리처방』와타나베 요시유키, 사토 타츠야
(베이직북스, 2011年)

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『法心理学への応用社会心理学アプローチ』
若林宏輔著(ナカニシヤ出版、2016年)

法と心理の交差領域である法心理学は立命館大学の研究の特徴の一つです。この本は裁判員裁判の評議に関する研究や情報的正義の提唱、そして心理学史研究と幅広い領域をカバーしています。著者は立命館大学で学部から研究を始めて博士号を取得。現在、立命館大学総合心理学部准教授。関係ないけど、立命館大学の男性教員で初めて育児休暇を取得した方です。

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『コミュニケーション支援のフィールドワーク:神経難病者への文化心理学的アプローチ』
日高友郎著(ナカニシヤ出版、2018年)

徐々に運動神経が衰えていく難病ALS患者である和中氏の自宅をフィールドワークして、そのコミュニケーションのあり方について描写しています。対象者をAさんと記号化するのではなく実名で描いた異色の研究ともいえます。研究者と対象者がお互いを尊重しあいながら研究が進行している様子がわかります。著者は立命館大学で日本文学と心理学を学び、最後は博士号を取得しました。現在、福島県立医科大学医学部講師。

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『大学生におけるうつ病の二次予防に関する臨床心理学研究』
川本静香著(ナカニシヤ出版、2019年)

大学生のうつ病についてその早期発見/受診のための課題を見いだすために様々な調査を行っています。大学生が考える「うつ病についての理論」のあり方も検討しています。著者は臨床心理士・公認心理師であり立命館大学で博士号を取得しました。現在、山梨大学大学院・総合研究部教育学域准教授。

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『化粧を語る・化粧で語る:社会・文化的文脈と個人の関係性』
木戸彩恵著(ナカニシヤ出版、2015年)

化粧という行為は、その人の年齢やその人の状況によって多様なバリエーションがあります。また、日本ではナチュラルメイクが主流で毎日行うが、そうではない国や文化もあるようです。化粧の意味づけについてインタビュー調査をもとに丁寧に描いていく研究です。著者は立命館大学を卒業し大学院で修士号を取得。現在、関西大学文学部准教授。

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『不妊治療者の人生選択』
安田裕子著(新曜社、2012年)

子どもを産めないことと家族を築くことはどのような関係にあるのでしょうか。子どもを授かる為の不妊治療を経験した後に、養子縁組を選ぶということはどのようなプロセスを経るものなのでしょうか。TEM(複線径路等至性モデリング)を用いた最も初期の研究にして最高の質の研究がここにあります。著者は臨床心理士・公認心理師であり立命館大学で修士号を取得。現在、立命館大学総合心理学部教授。

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『不登校経験者受け入れ高校のエスノグラフィー:生徒全体を支える場のデザイン』
神崎真実著(ナカニシヤ出版、2021年)

ある時期に学校に通えない方々を受け入れる高校でフィールドワークを行い、ハード的、ソフト的にどのようなデザインがなされているのかを明らかにした研究です。学部時代から7年にわたって一貫したテーマで取り組んだ成果が博士論文になりました。著者は現在、立命館グローバル・イノベーション研究機構(R-GIRO)専門研究員。

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『天国ニョーボ』全4巻(ビッグコミックス)
須賀原洋行著(小学館、2015~17年)

著者は立命館大学文学部出身・卓球部元主将の漫画家。「よしえサン」で知られる奥様が在宅療法を経てガンで亡くなる過程を描いたものです。少しコミカルでもあるがやはり悲しい物語です。現在のガン治療のプロセスも一瞥できます。

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『失踪日記』
吾妻ひでお著(イースト・プレス、2005年)

著者は知る人ぞ知る有名マンガ家です。人はなぜ失踪しどのようにアルコールに依存していくのか、そして入院するとどのようになっていくのか。漫画家自身の経験を描いたものです。知らない世界を知ることができます。

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『刑務所の中』(講談社漫画文庫)
花輪和一著(講談社、2006年)

拳銃不法所持で、約三年間にわたる獄中生活を送ることになった漫画家が、その生活を淡々と描いたものです。うらみつらみや批判などが無い分、刑務所ライフのあり方をよく知ることができます。

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『累犯障害者』(新潮文庫)
山本譲司著(新潮社、2009年)

政治資金規正法違反で一年半の実刑を受けた元国会議員は、刑務所では触法障害者達の世話をするのが仕事になりました。その時に出会った受刑者たちの実態の描写を通じて、刑罰とは何かを考えることができます。

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