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小田巻 友子 先生(経済学部)

2025.05.1


『自省録』
マルクス・アウレーリウス著 神谷美恵子譯(岩波書店、1956)

ローマ皇帝であり哲学者であったマルクス・アウレーリウスによる手記です。ストア哲学に傾倒し、安寧な世を切望しながら、皇帝としての重責や戦火に身を投じねばならなかったマルクスの心情の動きもつづられています。私は、ぱらっとめくってそこに書いてあることを読むという、偶然の出会いを楽しむスタイルで読みます。なぜか、今の自分にとって欠けている言葉を投げかけてくれる不思議な本です。

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『図南の翼』
小野不由美著(新潮社、2013)

卒業を控えた大学4年生の最後の春休みに、暇を持て余して十二国記を一気に読みました。シリーズのうち、未だに引っ張り出して読みたくなる一冊です。皆が飢える中で豊かな処遇に身を置かざるを得なかったものとしての葛藤や、「大人たちに勇気がないのなら、あたしが王になる!」という主人公の叫びは、大人になりかけだったあの頃も、大人になった今も私の胸をざわつかせます。

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『子どもたちの階級闘争 : ブロークン・ブリテンの無料託児所から』
ブレイディみかこ著(みすず書房、2017)

研究者として諸外国で就学前学校の視察を重ねる中で、保育・幼児教育の現場はその国の縮図であり、今どこに向かおうとしているのかを映す鏡だと感じています。本書では、「底辺託児所」(と著者が呼んでいる)で保育士のボランティアをしている著者の実体験が刺激的な言葉で綴られます。共に引き離されないよう、必死に生きる親子を翻弄させる政治や緊縮財政への憤りと、それでも未来に向けたかすかな希望を感じさせる一冊です。

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『データ対話型理論の発見 : 調査からいかに理論をうみだすか』
B.G.グレイザー, A.L.ストラウス著 ; 後藤隆, 大出春江, 水野節夫訳(新曜社、1996)

誇大理論(grand theory)に対抗する形で名付けられたグラウンデッド・セオリー(grounded theory)の道筋がここから生まれ、グレイザー派やストラウス派、その他へと枝分かれしていきます。データと対話を重ねることでいかに理論を生み出すことができるか、その技法について記された古典的な名著です。質的データを扱う研究に取り組む方にはぜひ手に取ってほしいと思います。

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『貧乏人の経済学 : もういちど貧困問題を根っこから考える』
アビジット・V・バナジー, エスター・デュフロ 著  山形浩生訳(みすず書房、2012)

貧しい国の子どもたちの死因になっている主要な病気の一つに下痢があります。なぜ貧しい人たちは下痢への対処法として塩素系漂白剤やORS(経口補水液)の使用といった安価で手軽な方法ではなく、必要でもない抗生物質の投与や手遅れになってからの手術といったずっとお金のかかる方法を選択するのでしょうか?本書を手に取り、まずはその選択の理由を知ってください。

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『コモンズのガバナンス : 人びとの協働と制度の進化』
エリノア・オストロム著 原田禎夫, 齋藤暖生, 嶋田大作訳(晃洋書房、2022)

ノーベル経済学賞を受賞したエリノア・オストロムの学術書です。私は院生時代に必死になって原著を読んでいましたが、待望の邦訳が発刊されました。扱われる事例が非常に詳細なため、読み通すには根気がいりますが、コモンズの管理において自治がなぜ望ましいのか、自治が機能する条件とは何かを雄弁に語っています。事例研究をされる方や、現実のグループや組織運営に悩んでいる方にヒントをもたらす一冊です。

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『手を動かしてまなぶ 基礎数学』
富川祥宗著(裳華房、2024)

著者とは前任校で同僚でした。入職説明会の開始直前まで、著者が難解な数式を解いていたのを覚えています。では、本書も難解なのかというと全く逆で、本編の分かり易さはもちろんのこと、痒い所に手が届くといいますか…ギリシャ文字の読み方・書き方に始まり、用語の説明や脚注での補足説明がとても丁寧で、読みふけってしまいます。学部を問わず、数学が苦手だけど学び直したいと思っている方に手に取ってほしいと思います。

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『隷属なき道 AIとの競争に勝つ、ベーシックインカムと一日三時間労働』
ルトガー・ブレグマン著 ; 野中香方子訳著(文藝春秋、2017)

ベーシックインカム(BI)とは、国が全ての個人に無条件で毎月、一定額のお金を配るという新しい所得保障制度の構想です。実際には、BIの有用性が古くから謳われてきたことを本書は示します。経済学者のケインズはかつて、週15時間労働で生活できる時代が来ると予想しました。今日、その実現のためには、労働とは切り離された所得を得る手段が必要です。本書を手に取り、ベーシックインカム導入の是非について議論してみませんか。

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『スウェーデンの小学校社会科の教科書を読む』
ヨーラン・スバネリッド [著] ; 鈴木賢志, 明治大学国際日本学部鈴木ゼミ編訳(新評論、2016)

本書は冒頭から私たちの社会の規範や法律や規則は変わると述べ、なぜ現行の仕組みとなっているのかを考えさせます。スウェーデンの教科書は、学生が暗記するものでも教員が指導するためのものでもなく、他者とこの国や社会の在り方について議論するためのものであることがわかります。印象的なのは、ルールの決定に貴方たちも参加できるのだと訴えかけ、メディアの活用や政治家への働きかけにより影響を与えることができると説明している点です。スウェーデンと日本の教科書との対比について述べた日本人大学生のコメントも興味深いです。

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『都市と地方をかきまぜる』
高橋博之著(光文社、2016)

食べる通信とは、生産者の価値観や生産に至るまでのストーリーを綴った購読紙と食べ物を届けるサービスです。通信により育まれた生産者とのつながりを通じて、ある購読者は自ら漁村に赴き、生産者と船に乗り、魚を船上でさばくことで命をいただくとは何かを実感します。食べる通信が求められる背景に、都市住民の生きる実感への渇望と、地方の第一次産業の従事者の抱えている後継者不足や経済的な課題があるという著者の視点も大変興味深いです。

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