大﨑 智史 先生 (映像学部)
2022.07.15
『「フィルム・アート」 : 映画芸術入門』
デイヴィッド・ボードウェル, クリスティン・トンプソン著 ; 飯岡詩朗 [ほか] 訳(名古屋大学出版会、2007年)
現在も版を重ね、各国で広く読みつがれている映画研究の入門書。映画とはいかなる芸術か。「第Ⅳ部 映画スタイル」を通じて映画媒体の特徴を知ることで、映画が違って見えるようになるだろう。具体例も豊富で、巻末の索引を作品リストとしても活用できる。
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『映画論の冒険者たち』
堀潤之、木原圭翔編(東京大学出版会、2021年)
映画をいかに語るのか。批評家、研究者、哲学者、それぞれの仕方で練り上げられた、21人の映画論のエッセンスが紹介される。映画論――ひいてはその歴史的展開――の初学者はもとより、未だ到来せざる映像の未来を生み出す「冒険者」にとっても、本書は必携の「地図」となるだろう。
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『現代アメリカ映画研究入門』
トマス・エルセサー, ウォーレン・バックランド著 ; 水島和則訳(書肆心水、2014年)
本書の特徴は、各章で代表的な映画理論を概説するだけでなく、それらをもとに作品分析が行われるという構成の妙にある。いささか難解ではあるものの、理論と映画作品を行き来することで双方の理解が促されるであろう。フロイト/ラカンの精神分析論をもとに『バック・トゥ・ザ・フューチャー』を分析する第8章は、本書でも白眉の作品論といえる。
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『批評理論入門 : 「フランケンシュタイン」解剖講義』
廣野由美子著(中央公論新社、2005年)
具体的な作品抜きに理論を語ることは「空しい」。そう述べる著者が、数多くの小説技法と批評理論をとりあげ、単一の作品を異なる角度から論じる実践的な一冊。作品の多様な相貌を浮かび上がらせる、理論のポテンシャルを大いに知ることができる。そのことはまた『フランケンシュタイン』という豊潤なテクストの再発見を意味するだろう。
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『メディア考古学 : 過去・現在・未来の対話のために』
エルキ・フータモ著 ; 太田純貴編訳(NTT出版、2015年)
テクノロジーの進化を複層的に捉えることで、ありえたかもしれない未来が立ち現れる。これまでに紡がれてきた、メディアにかかわる多様な実践に繰り返し現れる定型文句(トポス)に注目する著者のアプローチ――「メディア考古学」――が凝縮された一冊。テクノロジーの可能性を、異なる角度から探求する手がかりとなるだろう。
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『見るということ』
ジョン・バージャー著 ; 笠原美智子訳(筑摩書房、2005年)
美術批評家ジョン・バージャーのエッセイをまとめた一冊。単純で確実な行為と思われていた「見る」という行為の複雑さが、絵画や彫刻などさまざまな事例をもとに解き明かされる。原著の刊行から久しいものの、映像を絶えず目にする現代を生きるわたしたちに本書がもたらすものは少なくない。
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『ひとの目、驚異の進化 : 4つの凄い視覚能力があるわけ』
マーク・チャンギージー著 ; 柴田裕之訳(インターシフト、合同出版、2012年)
わたしたちはテレパシーで人の心を読み、障害物を透視し、さらには未来を予見する――著者はユニークな語り口で、人間がもつこうした「超人的能力」に注目し、視覚のメカニズムをめぐる謎に迫る。近年の成果をふまえつつ、門外漢にもわかりやすく解説される仮説の数々に、読者は頁を繰るたびに驚かされるだろう。
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『ラバーソウルの弾みかた : ビートルズと60年代文化のゆくえ』
佐藤良明著(平凡社、2004年)
時代を語るとはいかなる営為か。「コンポーザー」――ジョン・レノン、トマス・ピンチョン、グレゴリー・ベイトソン…――の実践の華麗な「アレンジ」を通じて、60年代の相貌が浮かび上がる。濃密でいてどこか軽やかさを感じさせる議論運びは、文化に向けられた著者の柔和かつ鋭敏なまなざしゆえかもしれない。
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『アフロ・ディズニー エイゼンシュテインから「オタク=黒人」まで』
菊地成孔、大谷能生(文藝春秋、2009年)
音楽家であり批評家の二名による、大学での講義をもとにした一冊。視聴覚の分断と統合をテーマに、幾多の理論が参照されながら、初期映画やブラックミュージックなど縦横無尽に20世紀の文化が語られる。時代を横断しながら次々と繰り出される著者の刺激的な謂は、ながら見/ながら聞きが常態化しつつある現代の映像文化を考える視座をもたらしてくれる。
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『のめりこませる技術 : 誰が物語を操るのか』
フランク・ローズ著 ; 島内哲朗訳(フィルムアート社、2012年)
「常時接続」がうたわれ、いつでもどこでも「コンテンツ」を受容できる現在、物語はいかに語られるのか。映画やテレビ、YouTubeやゲームを事例に、「消費者」を物語へと没入させる、多様な戦略が述べられる。ヘンリー・ジェンキンズ『コンヴァージェンス・カルチャー』とあわせて読めば、消費者の能動性、そして「物語」の力を強く認識させられる。
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