安保 寛尚 先生(法学部)
2019.04.01
『わたしはティチューバ : セイラムの黒人魔女』
マリーズ ・ コンデ 著 ; 風呂本 惇子、 西井 のぶ子 訳 (新水社、1998)
1692年にアメリカのセイラム(現:ダンバース)で起こった魔女裁判では、19人の「魔女」が絞首刑となりました。最初に告発され、魔術を使ったと自白したのが、バルバドス出身の奴隷ティチューバです。彼女が監獄で『緋文字』の主人公ヘスター・プリンと接触するのも読みどころ。グアドループ出身のコンデが謎の多い彼女の人生を紡ぎ出します。
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『ハバナ奇譚』
ダイナ ・ チャヴィアノ 著 ; 白川 貴子 訳(ランダムハウス講談社、2008)
キューバを構成する3つの民族融合の物語。キューバからマイアミに亡命したジャーナリストのセシリアは、祖国を愛し、憎むという矛盾した感情を抱えています。マイアミに出没する幽霊屋敷を取材し、バーで出会った謎の老女の物語を聴くうちに、スペイン、ナイジェリア、中国の祖先から自分に至るドラマに満ちた系図が浮かび上がってきます。個性的な神々や妖精が物語を彩ります。
(※当館所蔵無し、他大学所蔵あり。閲覧もしくは貸出が出来る場合あり。詳細はレファレンスカウンターへ)
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『ショコラ-歴史から消し去られたある黒人芸人の数奇な生涯-』
ジェラール ・ ノワリエル 著 ; 舘 葉月 訳(集英社インターナショナル、2017)
1888年、一人の黒人道化師がパリのサーカスに新風を吹き込みます。彼の名はラファエル。両親も苗字もないキューバ出身の元奴隷です。肌の色から侮蔑的に「ショコラ」というあだ名がつけられましたが、彼は当時のフランスでスターの仲間入りをしました。著者は乏しい資料に想像を交えて、人種差別と闘い懸命に生きた「ショコラ」の人生を再構築します。
(※当館所蔵無し、他大学所蔵あり。閲覧もしくは貸出が出来る場合あり。詳細はレファレンスカウンターへ)
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『ギリェン詩集(世界現代詩集8)』
Nicolás Guillén 著 ; 羽出庭 梟 訳 (飯塚書店、1963)
ぼくがキューバに関心を持つきっかけとなった詩集です。ギリェン(ギジェン)はキューバの国民詩人と言われます。ムラート(白人と黒人の混血)の詩人で、まだ人種差別が根強かった時代(原書の初版は1930年)に、キューバにおける黒人文化の評価を促しました。コール&レスポンスが挿入される「ソンの詩」を味わってみてください。
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『クレオールとは何か』
パトリック ・ シャモワゾー、 ラファエル ・ コンフィアン 著 ; 西谷 修 訳(平凡社、1995)
1635年から1975年までのカリブ海フランス語圏における歴史と文学、クレオール語をめぐる論考です。奴隷船の船倉に響く叫び、そしてプランテーションで生まれた語り部のクレオール語が、20世紀に入って、それぞれセゼールの「ネグリチュード」の叫びと、グリッサンの「クレオール化」の思想によって回復・継承されたという観点が興味深い。この本を読んだら、セゼールの詩集、グリッサンや著者たちの小説にぜひ手を伸ばしてください。
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『クレオール主義 : the heterology of culture』
今福 龍太 著(青土社、1994)
ぼくがこれまでに最も影響を受けた評論集です。カリブ海の歴史は、奴隷貿易、移民、亡命など、様々な民族の移動と混交によって特徴づけられます。「クレオール主義」というのは、単一性や純粋性への還元と固定化ではなく、多様な人種や文化の「混血」と変容による動的な創造性に目を向ける姿勢です。やや難解な文体ですが、文化人類学の枠を超えて、文学や絵画、写真などを交えた横断的考察はすごく刺激的です。
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『オスカー・ワオの短く凄まじい人生』
ジュノ ・ ディアス 著 ; 都甲 幸治, 久保 尚美 訳(新潮社 (新潮クレスト・ブックス)、2011)
英語とスペイン語が渾然一体となったカリブ文学作品。こんなに面白く、衝撃的に残酷で、切ない小説を他に知りません。スペイン語がわかると2倍楽しい。ドミニカ共和国の独裁者トルヒーリョに翻弄され(または「フク」の呪いをかけられ)離散した家族の人生が、ポップなノリと複数の語りの声で明らかになっていきます。同じ独裁者を扱ったダンティカの『骨狩りのとき』、バルガス・リョサの『チボの狂宴』、アルバレスの『蝶たちの時代』もあわせて読んでください。
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