福間 良明 先生(産業社会学部)
2019.07.01
<研究紹介>
専門は歴史社会学・メディア史研究です。これまでは戦前・戦後のナショナリズムや戦後日本の戦争イメージの変容を、思想やメディア(雑誌・映画・書籍・新聞など)と絡めながら研究してきました。近年は、それらに加えて、戦後の格差・教養・労働とも関連付けながら、勤労青年の文化史・メディア史について調べています。
『新装版 現代政治の思想と行動』
丸山 眞男 著 (未来社、2006年)
戦後知識人を代表する丸山眞男の代表的な論文集。「抑圧の移譲」と「無責任の体系」を析出した「超国家主義の論理と心理」は、いまなお示唆深いが、ナチ体制下における「正統」と「異端」の認識のずれを論じた「現代における人間と政治」は、つよく薦めたい。SNS時代の今日のコミュニケーションを考えるうえでも有益。
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『「キング」の時代:国民大衆雑誌の公共性』
佐藤 卓己 著 (岩波書店、2002年)
ファシズムは往々にして、デモクラシーと正反対のものとして認識されている。だが、はたしてそうなのか。戦時ファシズムは、「強制」ではなく、人々の主体的な「参加」に支えられていたのではないか。本書は戦前・戦後の著名な大衆雑誌『キング』(講談社)の盛衰を跡付けながら、ファシズムとデモクラシーが表裏一体になっている社会状況を描いている。
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『教養主義の没落 : 変わりゆくエリート学生文化』
竹内 洋 著 (中公新書、2003年)
大正期から1960年代にかけて、大学キャンパスでは「読書を通じた人格陶冶」という教養主義の規範が色濃く見られた。学生がこぞって岩波文庫を読み、思想や文学を語った時代である。とはいえ、その一見麗しいお題目は、見えない暴力や覇権争いを伴っていた。こうした教養主義は、何ゆえに盛り上がり、そして衰退したのか。それを鏡として、現代の大学のあり方を捉え返してみたい。
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『戦争体験 : 1970年への遺書』
安田 武 著 (未来社、1963年)
元学徒兵の安田武は、戦争体験を「反戦」の政治主義に流用することも、「顕彰」の心地よさに回収することもともに拒絶し、体験の「語り難さ」に固執した。体験・記憶をわかりやすく語ることで、何が削ぎ落とされるのか。いまとなっては忘れられた思想家だが、「死者に感銘を受ける、というのは生者の傲岸な頽廃である」という言葉は、いまなお重いものがある。
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『砕かれた神 : ある復員兵の手記』
渡辺 清 著(岩波現代文庫、2004年)
レイテ海戦で沈没した戦艦武蔵に乗り組んでいた著者は、熱烈な天皇崇拝者であり、終戦後もその思いは変わらなかった。しかし、戦争指導者たちが責任を取らなかったことに激しい憤りを覚え、「裏切られた」との思いを強めていく。それは同時に、「騙された自分」の責任を問うことにもつながった。「忠誠」の延長で「反逆」に至る思考から、現代のナショナリズムを考えたい。(※衣笠キャンパスに所蔵はありませんが、他キャンパスから取寄せできます)
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『まなざしの地獄 : 尽きなく生きることの社会学』
見田 宗介 著 (河出書房新社、2008年)
1960年代末の連続射殺事件で死刑判決を受けたN・N(永田則夫)の手記を読み込みながら、中学卒業後、集団就職で上京した人々の苦悶とそれを取り巻く社会構造を描いた名著。貧困、学歴、「田舎」をめぐる彼らの劣等感と、それを執拗にのぞき込もうとする都市。何気ない日常の暴力と戦後社会のひずみを鋭く問いただしている。
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『ハマータウンの野郎ども』
ポール ・ ウィリス 著 ; 熊沢 誠, 山田 潤 訳 (ちくま学芸文庫、1996年)
イギリス労働者階級の少年へのインタビューをもとに、学校文化への反抗が既存の階級構造の再生産を生み出す逆説を描く。「落ちこぼれ」の彼らは、学校のエリートたちを嘲笑い、喧嘩の強さや荒々しさを誇示する。だが、学校秩序への反抗は、結果的に彼らを労働者階級に押しとどめ、彼らは資本主義を末端で下支えする存在になっていく。私的なことを言えば、社会学の面白さに初めて気づいた書物でもある。
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