堀 雅晴 先生(法学部)
2017.03.01
『ハーレムの熱い日々』
吉田 ルイ子 著 (講談社, 1979)
吉田さん(1938~)は、フルブライト交換留学生としてコロンビア大学でフォトジャーナリズムを勉強された方です。白人の彼氏と一緒に、公民権運動にも参加されました。日本大使館での通訳のアルバイトを辞める一件も大切な話です。一度お会いしたことがあるのですが、素敵な女性です。『吉田ルイ子のアメリカ』1980年や『自分をさがして旅に生きてます』1983年その他も、どうぞ手に取ってみてください。
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『カラーパープル』
A. ウォーカー [著]; 柳沢 由実子 訳 (集英社, 1986)
16歳の米黒人セリーの話です。当時、映画〔DVD化されています〕を見る前に原作を読んでおこうと手に取りました。それぞれが別個の作品として、今もこころに残っています。ここで、もう少し紙幅があるのですが、作品の面白さを低めてしまいますのでやめておきます。
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『大事なことは憲法が教えてくれる : 日本国憲法の底力』
森 英樹 著 (新日本出版社, 2015)
私は授業で現代日本政治を教えていますけれど、教室ではなかなか上手に教えることができていません。それだから人気がなく、担当科目は小規模です。そこで、なんとかしなければと、いろいろ書籍を探していて、巡り合ったのが本書です。著者は名古屋大学名誉教授(憲法学)で、元は教師向けの月刊誌の連載記事だったこともあって、読んでいて楽しいです。
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『経済的徴兵制』
布施 祐仁 著 (集英社, 2015)
2015年9月19日に自民公明両与党の安倍連立政権は、安保法制関連法案を強行採決しました。そして南スーダンへの「駆けつけ警護付き」の自衛隊部隊の派兵が昨年11月に現実となりました。実は書名の経済的徴兵制って言葉は、「あかりちゃん」が広めてくれたこと、知ってた!?([動画]「【あかりちゃん】ヒゲの隊長に教えてあげてみた」「【あかりちゃん#2】HIGE MAX あかりのデス・ロード」)。本書を読めば、高校生時のアナタに、防衛省からの新兵募集資料が送りつけられた背景事情がわかります。
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『変える』
奥田 愛基 著 (河出書房新社, 2016)
著者は1992年生まれで、現在一橋大学の院生です。2015年春に「自由と民主主義のための学生緊急行動」(SEALDs)を立ち上げ、ReDEMOS(リデモス)で活動中。彼やSEALDsの若者たちのことを知らないと、日本のデモクラシーの未来を語ることができないと思って読みました。いっしょに映画「わたしの自由について~SEALDs2015~」(2016年/165分)も観たので、彼らと気持ちだけは同じになれた(と思います)。まだの方もいるみたいなので、学内で上映会をやりましょう。
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『愛よ知よ永遠なれ : グラムシ獄中からの手紙』
グラムシ [著]; カプリオッリョ, フビーニ 編; 大久保 昭男, 坂井 信義 訳 (大月書店, 1982)
本年は没後70周年を迎えるイタリアの思想家・実践家・国会議員、グラムシ(1891~1937)が、獄中からモスクワにいる家族に送った書簡です。心温まる内容です。妻や子供たちの悩みに向き合う彼の「思索」は民衆にとっての「常備薬」です。日本に関する記述もあります。そのあたりは、拙稿「グラムシ獄中からの手紙を読んで」季報唯物論研究 77号2001年をご笑覧ください。YouTubeに、The film Gramsci: Everything that Concerns People (1987)と題したドラマ番組がアップされています。
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『世界をゆるがした十日間』
ジョン ・ リード 著; 原 光雄 訳 (岩波書店, 1957)
今年はロシア十月革命から百周年を迎えます。その間にソビエト社会主義共和国連邦は1991年に崩壊しましたが、革命家たちが挑戦していた諸課題は今日その深刻度をいっそう増しています。本書は現地から伝えた米国人ジャーナリストのルポルタージュです。映画レッズ(Reds)(1981, DVD化)では彼の半生を、友人の証言も交えて描いています。溪内謙『歴史の中のソ連社会主義』岩波ブックレット、藤田勇『自由・平等と社会主義』青木書店もどうぞ。
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『沖縄の米軍基地 : 「県外移設」を考える』
高橋 哲哉 著 (集英社, 2015)
著者は1956年生まれで、現代の問題をクリティカルに分析する哲学者です。関西に住む人々の間では丹後半島へのXバンドレーダー基地の新設にも無頓着で、米軍基地=沖縄の「地域」問題とみているのではないでしょうか。沖縄だけに、この過重な負担を押し付け続けていいのかを考えます。同じ著者の、『教育と国家』『靖国問題』『犠牲のシステム 福島・沖縄』なども必読です。BS日テレ、金曜夜放送の「久米書店」では、店員の壇蜜さんも読了済みです。
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『命こそ宝 : 沖縄反戦の心』
阿波根 昌鴻 著 (岩波書店, 1992)
阿波根(1901~2002)さんは、1950年代に伊江島の土地の約六割が米軍に強制接収された際、「乞食行進」を組織されました。米兵に、米国憲法やリンカーの言葉で諭したということです。87歳の著者から話を直接伺いました。『米軍と農民:沖縄県伊江島』岩波新書1973年、『〔ビデオ〕教えられなかった戦争・沖縄編:阿波根昌鴻・伊江島の戦い』映像文化協会1998年も。
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『労働組合運動とはなにか : 絆のある働き方をもとめて』
熊沢 誠 著 (岩波書店, 2013)
著者は1938年生まれの労使関係論の学者です。本書は小生が担当する「現代の人権」のテキストです。この国の主権者であるアナタに、人間らしい働き方が労働組合への結集でしか実現しないことを強く訴えています。就活で超人気の「電通」で高橋まつりさんが超過労で亡くなられましたが、彼女にも入社前に是非とも読んでいてもらいたかったです。語り口は講演記録が元になっていますので、読みやすいです。
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『愛と怒り闘う勇気 : 女性ジャーナリストいのちの記録』
松井 やより 著 (岩波書店, 2003)
著者(1934~2002)はジャーナリスト。私が知ったのは、2000年12月に「慰安婦」にされた被害者の女性の正義と尊厳を回復するために、民間の力で開催された「女性国際戦犯法廷」に尽力されている報道記事でした。しかしすぐに本書を残されて、急逝されてしまいました。彼女からアナタへ、「二一世紀を生きる若い女性たちへのメッセージ」(240頁以降)を、どうしても伝えたいです。
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『生命かがやく日のために』
斎藤 茂男 著 (岩波書店, 1994)
著者(1928~1999)はジャーナリスト。『妻たちの思秋期:ルポルタージュ日本の幸福』(講談社+α文庫1994)や『生命かがやく日のために ルポルタージュ日本の幸福』(同左1996)を読み、筆の鋭さと温かさが気に入りました。彼の一文字一文字から、研究者として忘れてはいけない、大切なことを教えてくれました。
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『新編事実とは何か』
本多 勝一 著 (未来社, 1977)
著者は1932年生まれのジャーナリスト。中学3年の冬休み、兄が持ち帰った本が著者の『極限の民族』(朝日新聞社1967)でした。それ以来、今では文庫化された多数の書籍をよみ、社会の勉強をしました。みなさんは「事実が大切だ」ということは分かっていらっしゃると思いますが、改めて、本書で「事実とはなにか」を学んでみてはいかがでしょうか。ちなみに本多さんの『アメリカ合州国』を読んで、それ以来「合衆国」と書くことをやめました。BKCメディアセンターには、文庫版も所蔵しています。こちらもぜひ、手に取ってみてください。
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『論理トレーニング』
野矢 茂樹 著 (産業図書, 2006)
著者は1954年生まれの哲学者です。本書は文章の背後に隠れて目に見えない「骨格」を形作っている論理を、順接(そして)・逆接(しかし)から始まって、価値判断の構造や、批判の方法、最後に論文を書くところまで、丁寧に指導してくれます。このように書きますと、ハウツウ本と間違われてしまいますが、そうではありません。本書で訓練しない方は、いくら先行研究を検討しようとしても、表面的な字面ばかりを追ってしまって、論理構造の把握に失敗してしまいます。なお一人では読破が難しいでしょうから、グループで楽しく取り組んでみてください。
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『丸山眞男の思想世界』
笹倉 秀夫 [著] (みすず書房, 2003)
著者は1947年生まれの法思想家です。本書は3部構成ですが、今回特に注目したいのが、第3部丸山における"複合的な思考"です。①思想家論・歴史像に見られる"複合的な思考"、②学問姿勢に見られる"複合的な思考"、③根本思想上の"複合的な思考"―自立性と主体性をめぐって、から成っていて、大変に濃い内容です。刈谷剛彦『知的複眼思考法:誰でも持っている創造力のスイッチ』(講談社+α文庫2002年)と読み比べれば、一目瞭然です。
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『自己内対話 : 3冊のノートから』
丸山 眞男 [著] (みすず書房, 1998)
日本の思想家である丸山(1914-1996)が自分自身のために書き留めていたノートです。本人は、死後、公刊されるなんて思ってもみなかったのではないでしょうか。出版にあたっては個人名が□□として伏せられていますが、誰のことを指しているのかは想像がつきます(周知の事実だから)。重要なことは、そこで書かれている内容ですが、当の□□はあるところでみたら・・・の態度でした(もし万が一間違っていたらいけませんので・・・にしました)。まだの方は至急ご一読ください。なお丸山のAV資料も3点所蔵されていますので、視聴してみてください。
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『一身にして二生、一人にして両身 : ある政治研究者の戦前と戦後』
石田 雄 著 (岩波書店, 2006)
現在93歳の政治学者の自叙伝。学徒出陣から復員したあと、雑誌「世界」(1946年5月号)に掲載された丸山眞男「超国家主義の論理と真理」を読んで、その後の人生を決めたということです。本書を読めば、著者がいかに、「一身にして二生」と言われるだけの仕事をダイナミックにされてきたか、また豊かな人間性を育まれてきたのかがわかります。
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『家永三郎集 第16巻 自伝 : 付著作目録・年譜』
家永 三郎 著 (岩波書店, 1999)
教科書裁判を提起したことで有名な著者(1913~2002)の1977年までの自伝。高校生の時、旧版の三省堂新書(1967年)を図書室から借りて読み、また文部省検定に合格しなかった『検定不合格日本史』(三一書房1974年)を注文して、合格本と一緒に教室で読んでいました。新入生の皆さんには、これから待っている、「検定」の外に広がる、「学問の世界」の素晴らしさをよく知ってほしいものです。なお本書は『一歴史学者の歩み』岩波現代文庫2003年として、一部で訂正も加えられて刊行されています。
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『ある高校教師の戦後史』
藤原 治 著 (岩波書店, 1974)
1990年代初頭に80歳代の著者にお会いしたことがあります。羽仁五郎に習ったという気骨のある方で、日本の行く末を危惧されていた。校長として復帰前の沖縄への修学旅行を実行されたことなど、その当時本書を読んでいなかったので知りませんでした。近現代史家の松尾尊兊(たかよし)氏(1929~2014)は旧制松江高校での教え子だということです(松尾『昨日の風景――師と友と』岩波書店2004年未読)。
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『いくつもの岐路を回顧して : 都留重人自伝』
都留 重人 著 (岩波書店, 2001)
著者(1912~2006)は経済学者。第八高等学校の時に侵略戦争に反対をして除籍となり、渡米し、ハーバード大学で学位を取得し同大学で講師となられますが、日米開戦後に交換船で帰国した。戦後は一橋大学学長を務め、雑誌『公害研究』(『環境と公害』)を創刊して、学際的な研究を組織されました。本書でその経緯がよくわかります。なお書棚には一緒に、地球で人類が生き延びていくうえで大変なお荷物となっている資本主義と日米安全保障体制の処方箋を述べている、『21世紀 日本への期待』『体制変革の展望』が並んでいます。
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