星野 郁 先生(国際関係学部)
~金融危機と現代資本主義の危機を読み解く~
『マッド・マネー : 世紀末のカジノ資本主義』
スーザン・ストレンジ著(岩波書店、1999年 他)
著名な国際政治経済学者であった故スーザン・ストレンジによる、金融の暴走によりカジノ化(投機化)していた20世紀末の資本主義のあり方に対し、厳しい批判と警鐘を鳴らした古典的名著で、本書で示された考察や優れた洞察力は、益々輝きを増している。
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『カウフマンの証言 : ウォール街』
ヘンリー・カウフマン著(東洋経済新報社、2001年)
アメリカの投資銀行ソロモン・ブラザーズの主席エコノミストとして、一時ウォール街の偶像でもあったカウフマンによる、ウォール街の内側から見たアメリカの金融システムとビジネスの発展史であり、豊富なエピソード、批判的考察、洞察力に富んだ分析がちりばめられている。
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『ブラック・スワン : 不確実性とリスクの本質』
ナシーム・ニコラス・タレブ著(ダイヤモンド社、2009年)
ブラック・スワン(黒い白鳥)とは、確率論や従来からの知識や経験からでは予測できない極端な現象(事象)が発生し、その事象が人々に多大な影響を与えることを指しており、同書は、グローバルな金融危機の発生を予言したものとして、危機発生後にベストセラーとなっている。
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『狂奔する資本主義 : 格差社会から新たな福祉社会へ』
アンドルー・グリン著(ダイヤモンド社、2007年)
イギリスの代表的なマルクス経済学者であった故グリンによる、戦後の資本主義の発展に関する批判的分析の書。戦後の資本主義は、70年代の深刻な危機を、新自由主義原理の導入並びに金融主導の成長によって克服したものの、まさにそのことが格差社会の出現や今回の金融危機につながったとする。
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『失墜するアメリカ経済 : ネオリベラル政策とその代替策』
ロバート・ポーリン著(日本経済評論社、 2008年)
アメリカのラディカル経済学派のポーリンにより、今回の金融危機発生以前に書かれた歴代のアメリカ政府の経済政策に対する批判の書。ブッシュ政権下で起きたサブプライム危機について、むしろその主要な要因は、クリントン政権期の金融主導の経済政策の運営にあったと見る。
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『大いなる不安定 : 金融危機は偶然ではない、必然である』
ヌリエル・ルービニ, スティーブン・ミーム著(ダイヤモンド社 、2010年)
2006年秋の段階で既に今回の金融・経済危機の到来を予想し、危機の発生によって一躍有名となったルービニとミームの共著。100年に1度と言われた今回の危機は、偶然ではなく必然であり、この先資本主義世界は幾度も危機に遭遇すると予想している。
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『金融資本主義の崩壊 : 市場絶対主義を超えて』
ロベール・ボワイエ [著](藤原書店、2011年)
フランスのレギュラシオン学派の代表的論客である、ボワイエによる、包括的かつ歴史的な視点に基づく、グローバルな金融危機の要因分析の書。今回の危機を金融主導型成長の必然的危機と捉え、公的統制に基づく新しい金融システムと成長モデル構築の必要性を唱えている。
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『フォールト・ラインズ : 「大断層」が金融危機を再び招く』
ラグラム・ラジャン [著] (新潮社、2011年)
IMFのチーフエコノミストとして、2005年の段階で金融機関の過剰なリスクテイクによる金融システムの不安定化・金融危機の発生を予言したラジャンの書。同様の危機は今後も発生する可能があり、世界には危機の発生につながる大断層が至る所に存在すると警鐘を鳴らしている。
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『国家対巨大銀行 : 金融の肥大化による新たな危機』
サイモン・ジョンソン, ジェームズ・クワック著(ダイヤモンド社、2011年)
グローバル金融危機では、金融危機を引き起こした張本人であり、大きすぎて潰せない欧米の巨大金融機関の処遇が問題となったが、結果的に危機を経てさらに寡占化・巨大化することになった。本書はアメリカにおけるその背景について歴史に遡って考察し、巨大金融機関の解体を提案している。
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『資本の「謎」 : 世界金融恐慌と21世紀資本主義』
デヴィッド・ハーヴェイ著(作品社、2012年)
世界的に著名なマルクス経済学者ハーヴェイによる、経済地理学を応用しマルクス経済学の観点から金融危機の発生とその破綻のメカニズムを明らかにした書。金融・経済危機は資本主義にとって不可避とされ、2011年世界の経済書ベスト5に選ばれている。
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『世界の99%を貧困にする経済』
ジョセフ・E.スティグリッツ著(徳間書店、2012年)
グローバルな金融・経済危機は、危機発生の以前から顕著であった経済格差をさらに広げることになった。元世界銀行のエコノミストであり、ノーベル経済学者でもある、スティグリッツによる、アメリカを中心とした、こうしたグローバル経済の現状を批判した啓蒙書。
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『ケインズかハイエクか : 資本主義を動かした世紀の対決』
ニコラス・ワプショット [著] (新潮社、2012年)
グローバル金融・経済危機の発生をきっかけに、危機への対応策をめぐり、20世紀の経済学の巨人であるケインズとハイエクに対する関心が復活している。本書は、様々なエピソードを交え、経済政策の歴史的変遷を絡ませながら、両者の思想・理論の違いを鮮やかに描き出している。
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