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加國 尚志 先生(文学部)

2016.12.01


『眼と精神』
M. メルロ=ポンティ 著 ; 滝浦 静雄, 木田 元 訳 (みすず書房 , 1966)

メルロ=ポンティの最後の論文。セザンヌやクレーの絵画を論じながらデカルト存在論への批判、身体論、芸術論が展開される。彼の晩年の「野生の存在」の存在論への鍵となる論文である。私は、これを読んで哲学研究者となることを決意した。

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『過程と実在 : コスモロジーへの試論』
A. N. ホワイトヘッド [著] ; 平林 康之 訳 (みすず書房 , 1981-1983)

もともとはラッセルとともに論理主義の立場だったホワイトヘッドが、存在から生成へ、すべての実在が過程として展開される壮大な「有機体の哲学」を述べた著作である。あまりに独創的な哲学であるが、その思索のスケールの大きさと哲学的創造性は形而上学的問題意識を刺激しつづけてくれる。

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『人間的自由の本質』
シェリング 著 ; 西谷 啓治 訳 (岩波書店 , 1975)

ドイツ観念論の哲学者シェリングが人間の自由と悪の問題を論じた著作。人間の我意(エゴイズム)が存在の中心からの離反=背きとしての自由=悪にあることを見据えながら、無底としての神の愛による善悪の対立の乗り越えを説く。個人的にはニーチェよりも、シェリングとドストエフスキーの方がニヒリズムの射程と帰結をよく見ていたように思う。

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『造形思考』
パウル ・ クレー 著 ; 土方 定一, 菊盛 英夫, 坂崎 乙郎 訳(筑摩書房 , 2016)

絵画の可能性を極限まで思考しようとしたクレーの講義や手記を集めたもの。ほとんど芸術が不可能と思われる時代に、線や色彩やフォルムによって宇宙と自然の本質をとらえようとしたクレーの言葉は、難解ではあるが、芸術の中の思考のありようを教えてくれる。

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『変身 ; 断食芸人』
カフカ 作 ; 山下 肇, 山下 萬里 訳(岩波書店 , 2004)

受験生の頃、カフカを夢中になって読み耽った。合格するはずのない大学を目指す不条理な勉強からの逃避と言えばそれまでだが、この逃避のおかげで自分の生きる構えのようなものを得た、と今では思っている。『断食芸人』は、最近、元赤軍の足立正生監督で映画化された。

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『失われた時を求めて』
マルセル ・ プルースト 著 ; 井上 究一郎 訳 (筑摩書房 , 1993)

言うまでもなく20世紀文学最大の記念碑的作品。大学に入った頃手にとったが、避暑地でのブルジョアジーの生活などとはまったく縁のない貧乏学生にはさっぱりおもしろくなかった。大学院を修了した頃、『囚われの女』から読んでみて、その心理描写の一つ一つに全身ごと深くひきずりこまれた。読書にはそれなりの人生経験と成長が必要だったということだろう。失われた過去を永遠に刻もうとする文学的野心の、これはやはり究極の達成にちがいない。

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『孤独な散歩者の夢想』
ルソー 著 ; 今野 一雄 訳 (岩波書店 ,1960)

子どもの頃から文章を書くことが好きだった。小学生の頃の夢は作家になることだったが、まったくその才能はなかった。哲学の論文はなんとか書けるようになったが、自分が学術的文章に向いているとは思えない。他人に読まれることを考えず、自分のためだけに書く、というルソーの晩年の境地、人間の世界から離れて白紙の上を動く筆の動きと無為な言葉のありさまが、もしかしたら私の秘かな憧れだったのかもしれない。

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『平和の訴え』
エラスムス 著 ; 箕輪 三郎 訳 (岩波書店 , 1961)

古典を読む意義は過去の偉大な知性に触れる、ということと、変わることのない人間の本質を学ぶことにある。今から500年前に出版された本書は、戦争を起こす人間の愚かさと平和のために民衆が連帯する必要性が、今日に至るまで何も変わっていないことを教えてくれる。

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『古今和歌集』
佐伯 梅友 校注 (岩波書店 , 1981)

日本語はなかなかむずかしい。日本語を学ぶには過去のすぐれた日本語に触れるしかない。最近は、ことばのたねは人の心である、という考え方に否定しがたいものがあると感じるようになった。今から千百年前にこのような言語観をもっていた日本語文化を、普遍性がないなどと卑下する必要はまったくないと思うのだが。

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『文語訳新約聖書 : 詩篇付』
(岩波書店 , 2014)

近年、旧友がつづけて亡くなった。死について考えることが多くなった。哲学を教えてはいるが、歴史上の哲学は死についてあまりまともに考えてこなかったように思う。死とは何か、死へ向かう生とは何か、私には何もわからない。学問や研究ということとは別に、少しずつ宗教的な何かについて考えはじめている。

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