嘉門 優 先生(法学部)
法律、とくに刑法には堅苦しいイメージがともないがちです。今回推薦させていただくにあたって、様々な角度から刑法、犯罪・刑罰について考えてみると面白いですよといえたら…と思って作品を選びました。この機会に、みなさんに刑法に関心を持ってもらえればと思います。
『犯罪と刑罰』
ベッカリーア著(岩波文庫 、1959年 他)
本書の内容は――現在では当然に認められている――近代刑法の諸原則の礎となりました。たとえば、拷問の禁止や罪刑法定主義などについて、筆者はフランス革命より25年も前に記していました。ぜひ本書を読みながら、刑法の諸原則の重要性について再確認してみてください。
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『罪と罰』
ドストエフスキー作(岩波文庫、1999年 他)
あまりにも有名な古典ですので、紹介は不要と思います。犯罪はいわば社会の暗黒面といえ、多くの文学作品において題材として扱われてきました。その意味では、犯罪はけっして法学だけの対象ではなく、文学、社会学などといった多くの分野の対象です。「犯罪と刑罰」について、法学とは異なる視点から本作品を読んで考えてみてください。
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『疾風怒濤一法律家の生涯 : 佐伯千仭先生に聞く』
佐伯千仭語り手 ; 井戸田侃, 浅田和茂聞き手(成文堂 、2011年)
佐伯千仭先生は戦前から刑法・刑事訴訟法の研究者として、また、戦後は弁護士としても活動された先生で、2006年に逝去されました。本書では、現在の私たちからは想像のつかない、戦時下から戦後にかけての教育・研究をとりまく困難な状況について触れられています(なお、1933年の滝川事件、1947年の教職追放の際の知られていなかった事情が明らかにされています)。また、先生が研究者・弁護士として、単なる法としてだけではなく、「生きている人間」に常に心を向けられてきたことは、現代の法律家が受け継いでいかなければならない伝統であると思います。
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『定刻主義者の歩み』
中山研一著(成文堂 、2007年)
本書は2011年7月に亡くなられた中山研一先生の著書です。先生は刑法学者として多くの優れた研究業績を残されましたが、本書には「自分史」として研究生活や多くの人との交流について記されています。研究書とは少し異なり、中山先生の研究に対する姿勢や人柄、さらに、刑法や社会に対する関心や問題意識が直に伝わってきます。ちなみに、後半では立命館で講義をされた際のことやブログの記事も掲載されています。
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『反骨のコツ』
團藤重光著(朝日新書、2007年)
刑法学者であり、また、最高裁判事でもあった団藤重光先生が、自らの経歴、さらに、団藤説の内容(死刑廃止論、主体性論など)やその背景などについて対談形式でわかりやすく答えられています(ちょっと意外ですが、三島由紀夫も東大にて団藤説の影響を受けたそうです)。先生は残念ながら2012年6月に亡くなられましたが、その多くの研究業績は現在も学界に大きな影響を与え続けています。
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『法窓夜話』
穂積陳重著(岩波文庫、1980年)
日本の近代法整備に貢献した著者が、息子である穂積重遠に毎夜10時になると様々な法律談を聞かせたそうです。その話をもとに作られたのが本書です。その内容は法律全般にわたるもので、読み物として面白いのはもちろんですが、法律学の観点から興味深い内容が多く含まれています。
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『チャタレイ夫人の恋人 : 完訳』
ロレンス [著](新潮文庫、1996年)
本作品の文学的な価値について語る術を私は持ちません。では、なぜ本作品を推薦したかといいますと、実は、本作品にわいせつ表現があるとして、発行人と訳者が有罪判決を受けたという事情があるからです(最大判昭和32年3月13日刑集11巻3号997頁)。その後、本作品は一部削除されましたが、平成20年になって「完訳版」が発行されました(その経緯は巻末を参照)。ぜひこの「完訳版」を読んで、最高裁による「わいせつ物」の理解とはどういうものなのか、また、その妥当性について考えてみてください(この程度で?と思うかもしれません。関心のある方はぜひ最高裁判例も読んでみてください)。さらに、表現の自由の重要性についても改めて考えてみてください。
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『1984年』
ジョージ・オーウェル著(ハヤカワ文庫、1972年 他)
本書は、「偉大な兄弟(Big Brother)」に指導される独裁政府が、人々の社会を監視し、思想・言語などすべての人間性を完全な管理下に置く社会を描いています。本書に登場する、偉大な兄弟(独裁者)、ダブルシンク(一つの精神が同時に相矛盾する二つの信条を持ち、その両方共を受け入れられる能力)などの用語は、現代の社会問題を扱う書物でそのまま使用されることがあります。刑罰という人間の自由を制約する手段を考えるにあたって、まずは本書を読んで、人間の自由の意義を考えるきっかけにしてみてはいかがでしょうか。
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『獄窓記』
山本譲司著(新潮文庫、2008年)
本書は、秘書給与事件で実刑判決を受けた元衆議院議員による、刑務所での実体験にもとづく作品です。2003年に本書が書かれて以後、監獄法が改正され、刑務所での処遇は変化してきています。しかし、本書が提起した問題はいまだに解決されたとはいいがたい状況にあります。あまり知られていない刑務所での生活について、本書を読んで考えるきっかけにしてみてください。
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『刑務所の風景 : 社会を見つめる刑務所モノグラフ』
浜井浩一編著(日本評論社、2006年)
本書は、現在龍谷大学教授である著者が、刑務所で矯正職員として勤務した経験にもとづいて刑務所の実際の状況について記した作品です。刑務所などの処遇現場でえた正確なデータと、事実に基づいた分析により、現在の刑務所の諸問題が科学的に明らかにされています。
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『自白の心理学』
浜田寿美男著(岩波新書、2001年)
著者は、身に覚えのない犯罪を自白することなどありえないという人々の思い込みを覆す研究をされた方だといえます。捜査において当たり前に行われていた自白の強要が、冤罪の温床となっていることの問題性は以前から指摘されてきましたが、本書では、とくに自白に至るメカニズムについて心理学的に分析・検証されています。
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『それでもボクはやってない : 日本の刑事裁判、まだまだ疑問あり!』
周防正行著(幻冬舎、2007年)
すでに同名の映画をご覧になった方も多いと思います。本書には、裁判官・最高裁調査官を務め、現在は法政大学大学院法務研究科教授の木谷明氏に対し、周防正行監督が現在の刑事裁判に対する疑問を投げかけた対談集が収められています。映画をご覧になっていない方はまずは映画からどうぞ。
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