川村 健一郎 先生(映像学部)
『アヴァンギャルド芸術』
花田清輝[著](講談社文芸文庫 、1994年)
戦後の政治状況を背景に、芸術における前衛とは何かを考察した評論集だが、ダリ、忍術、ギリシャ哲学、岡本太郎、『怪猫有馬御殿』、非ユークリッド幾何学、ドキュメンタリー、名探偵ファイロ・ヴァンスといった固有名が交錯し合う縦横無尽の語り口に感服。
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『映像の発見 : アヴァンギャルドとドキュメンタリー』
松本俊夫著(清流出版、2005年)
吉本隆明と花田清輝の影響下に、ドキュメンタリー映画の革新を提唱した松本の第一評論集。近年、再評価著しい松本だが、本書の復刊もその流れの一つ(オリジナルは1963年刊)。大島渚に与えた影響も大きく、日本のヌーヴェル・ヴァーグの理論的主著と言ってよい。
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『体験的戦後映像論』
大島渚著(朝日新聞社、1975年)
大島渚の私的映画体験が戦後の政治状況と絡めて綴られている。戦後日本と映画の関わりを考える上で、教えられることの多い一冊。特に、戦時の映像を編集したTVドキュメンタリー『大東亜戦争』の制作経験から、「敗者は映像をもたない」と喝破した巻頭エッセイは示唆に満ちている。
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『ドキュメンタリーの海へ : 記録映画作家・土本典昭との対話』
土本典昭, 石坂健治著(現代書館、2008年)
本書出版直前に亡くなった土本典昭のインタビュー記録。東京国際映画祭ディレクターを務める石坂健治が聞き手となり、水俣を撮り続けた記録映画作家・土本の思想と実践を振り返っていく。本書とともに、土本のドキュメンタリーや著作にもぜひ触れてほしい。
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『黒沢清の映画術』
黒沢清著(新潮社 、2006年)
最新作『トウキョウソナタ』も記憶に新しい映画監督・黒沢清が、自作の創作の裏側を包み隠さず語り下ろした自伝。よく知られた立教大学での蓮實重彦との邂逅をはじめ、どのエピソードも興味深いが、特にホラー映画でも本領を発揮する黒沢の幽霊論、怪談論が出色。
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『昭和の劇 : 映画脚本家笠原和夫』
笠原和夫, 荒井晴彦, [スガ]秀実著(太田出版、2002年)
『博奕打ち 総長賭博』、『仁義なき戦い』、『大日本帝国』などの脚本で知られる笠原の自伝的昭和史。徹底した取材と強靭な想像力によって、昭和の事件・事象を物語化してきた笠原の思想と体験が、絶好の聞き手によって、明らかにされていく。抜群の面白さ。
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『成瀬巳喜男の設計 : 美術監督は回想する』
中古智, 蓮実重彦著(筑摩書房 、1990年)
成瀬巳喜男作品の美術を長年にわたって務めた中古智の回想録。蓮實重彦が聞き手になり、『めし』、『浮雲』などの成瀬作品に即して、東宝撮影所の美術の粋が語られていく。同じ聞き手による、小津安二郎作品の撮影を担当した厚田雄春の回想録『小津安二郎物語』もおすすめ。
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『物語・日本人の占領』
津野海太郎著 (朝日新聞社、1985年)
太平洋戦争期、今日出海、尾崎士郎、三木清といった名だたる作家・思想家が従軍していた比島(フィリピン)派遣軍宣伝班の困惑と憂鬱に満ちた命運を辿る。津野は、被占領者の視点をつきあわせることによって、精神主義的な文化工作の不毛と滑稽を鮮やかに浮かび上がらせた。
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『戦時下の日本映画 : 人々は国策映画を観たか』
古川隆久著(吉川弘文館、2003年)
国威発揚のための映画も、観られなければ、その目的を果たせない。しかし、国家が国民必見の映画だといくら肩肘を張ってみても、人々は道義や倫理で映画を観るわけではないのだ。本書は国策による映画統制が大衆の欲望に裏切られていくさまを見事に活写している。
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『ドキュメンタリー映画の地平 : 世界を批判的に受けとめるために』
佐藤真著(凱風社、2001年)
佐藤真は2007年に世を去った。『阿賀に生きる』などの優れたドキュメンタリーとともに、彼の旺盛な執筆活動の成果も我々に残された貴重な遺産だ。「言語表現を超えたつかみどころのない何ものか」をとらえることに賭けたドキュメンタリー作家の面目躍如たる作品論。
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『日活アクションの華麗な世界 : 1954-1971』
渡辺武信著(未來社 、2004年)
建築家にして映画評論家である渡辺の大部な映画ジャンル論。石原裕次郎の登場によって、ヒーロー像を確立し、多くの観客を集めることになった日活アクション映画のおよそ15年に亘る興隆と衰退を、緻密な作品分析を通じて、詳細に記述している。躍動するスターの姿が目に浮かぶ。
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『ホラー映画の魅力 : ファンダメンタル・ホラー宣言』
小中千昭著(岩波書店、2003年)
『リング』、『呪怨』など、「本当に怖い」と評判になったJホラー。脚本家の高橋洋や監督の清水崇ら、Jホラーの中心的な担い手たちに大きな刺激を与えたのが本書の著者小中だった。低予算オリジナル・ビデオの制作経験によって蓄積された「恐怖の方程式」が開陳される。
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『芸術経営学講座 : 4 : 映像編』
松本正道編(東海大学出版会、1994年)
アート・マネジメントに対する関心の高まりから90年代半ばに出版された本書ではあるが、映画に関しては類書がなく、かつ、映画の製作、輸入、配給、上映からジャーナリズム(批評)、法、保険まで、その実際が具体的に解説されているので、現在においてもその価値は揺るがない。
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『マンハッタンのKUROSAWA : 英語の字幕版はありますか?』
平野共余子著(清流出版、2006年)
ニューヨークにある民間団体ジャパン・ソサエティーで、18年にわたり日本映画の上映を企画・運営してきた平野共余子。上映にまつわる様々な苦労の中で、日本映画を通じて深められたスコセッシやソンタグとの交流には心を動かされる。公共的な上映のあり方を考える上でも一読をすすめる。
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『映画館 (ミニシアター) のつくり方』
奥田瑛二 [ほか] 著(AC Books、2010年)
本書では、北海道から沖縄まで、東京近郊以外の各地域で奮闘する16のミニシアターの現況が、運営に直接携わっている人々によって綴られている。映画が映画館で観られなくなりつつある時代に、ミニシアター経営のあり方と館主の情熱的な仕事ぶりを伝える好著。
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