森久 智江 先生(法学部)
『癒しと和解への旅 : 犯罪被害者と死刑囚の家族たち』
坂上 香 著(岩波書店, 1999.)
アメリカの犯罪被害者遺族と死刑囚の家族がともに死刑廃止を訴えて旅をする「ジャーニー・オブ・ホープ」について、ドキュメンタリー映画監督である著者が、共に旅をしながら綴った記録。「癒し」も「和解」も、そんなに生易しいものではない。「加害者」と「被害者」という「二項対立軸的な思考」からの脱却の契機がここにある。
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『人間の条件 : そんなものない』
立岩 真也 著(イースト・プレス, 2011. (よりみちパン!セ, P008))
著者の主張について、中高生を中心に若い世代向けにたおやかに書かれた一冊。人が人として生きる上で、われわれが意識的/無意識的に掲げ、従う(従わせようとする)「条件」がある。しかしそれは本当に自明のものだろうか。世界は一朝一夕には変わらないが、ほんの少しずつでも変えようと思えば少しずつ変わる、そう思える本。
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『まなざしの地獄 : 尽きなく生きることの社会学』
見田 宗介 著(河出書房新社, 2008.)
死刑の適用基準を示したとされる永山事件判決。その当事者・永山則夫を分析対象にしながら、社会において人を規定する「まなざし」とは何か、その普遍性を暴く。ときに語られる「誰でもいいから人を殺してみたかった」という「動機」の背景を考える上で、読んでおきたい1960年代~70年代の古典。
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『監獄の誕生 : 監視と処罰』
ミシェル ・ フーコー 著 ; 田村 俶 訳(新潮社, 1977.)
言わずと知れた20世紀を代表するフランスの哲学者・フーコー(「振り子」の人ではない)の代表作のひとつ。刑務所への収容を「刑罰」として「当たり前」だと思う人に、ぜひこれを読んでその意味を今一度考えてみてほしい。フーコーの著作の中でも比較的読みやすく、おすすめ。
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『完訳アウトサイダーズ : ラベリング理論再考』
ハワード S. ベッカー 著 ; 村上 直之 訳(現代人文社, 2011.)
犯罪社会学の古典が、完訳として近年出版されたもの。本書には、初版にはなかった、ラベリング理論の再考に関する論稿が収録され、同理論への批判に対する反論がなされている。社会から「アウトサイダー」のラベルを貼られた人々は、現状の社会における「異端者」であると同時に、社会を変える「変革者」でもある。ラベルを貼る側の社会の根拠の「希薄さ」が問われている。
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『性犯罪からの離脱 : 「良き人生モデル」がひらく可能性』
D. リチャード ・ ローズ, トニー ・ ウォード 著(日本評論社, 2014.)
犯罪行為者の社会復帰モデルとして、オーストラリアで浸透している「良き人生モデル(Good Lives Model)」を、性犯罪を行った犯罪行為者の社会復帰を中心に説く。「犯罪」という行為が法に反する行為である以前に、そもそも人生においてどのような意味を持つのか。「犯罪」を自らに関係のない行為だと思う人にこそ読んでほしい一冊。
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『生きのびるための犯罪 (みち)』
上岡 陽江, ダルク女性ハウス 著(イースト・プレス, 2012.(よりみちパン!セ ; P052))
「人権」という言葉から、それが生まれながらに自らに在ることを実感できるということは、「当たり前」のように思える。「人権」を、まるで電灯のように「ついたり消えたりするもの」としてしか実感することが出来なかった(出来ない)人々の言葉を、われわれはあまりにも知らない。本書に綴られた言葉たちから、自らの「当たり前」の幸せについて想うだろう。
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『弟を殺した彼と、僕。』
原田 正治 著 ; 前川 ヨウ 構成(ポプラ社,2004.)
われわれの中で、「犯罪被害者の声を聴く」ということが、「加害者により厳しい刑罰を科する」という回路にしかつながらないのは何故か。「答えの出ないテーマ」に真摯に向き合う筆者の姿勢から、メディアや偏見によって作り上げられたステレオタイプな被害者像に、いかにわれわれが支配されているのかを気付かされる。
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『つながりの作法 : 同じでもなく違うでもなく』
綾屋 紗月, 熊谷 晋一郎 著.(日本放送出版協会, 2010. (生活人新書 ; 335))
アスペルガー症候群と脳性まひというそれぞれの筆者の「生きづらさ」を、世界や他者との「つながり」の困難として捉えなおしながら、「違いを認めながらつながる」ための条件を提示する本書。何らかの診断可能な障がいに限らず、われわれがお互いの「違いを認めながらつながる」ことを模索するためのヒントを与えてくれる。
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『治りませんように : べてるの家のいま』
斉藤 道雄 著(みすず書房, 2010.)
決して「外の人から見た『感動的』なドキュメンタリー」のように描かれていない本書の筆致が、精神障害やアルコール依存を抱える人々の共同生活の場である、北海道浦河「べてるの家」の日常を淡々と伝える。ここは「困難を抱える人々が助け合って暮らす理想郷」ではなく、自ら生きようとする人々が「強さ」と「弱さ」を共有する場所。きっといい意味で「期待」を裏切られる本。
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『告白』
町田 康 著(中央公論新社, 2008. (中公文庫 ; ま35-2))
「人はなぜ人を殺すのか」を問いながら、河内音頭をモチーフにした大量殺人事件について、著者独特のどこかユーモラスな文体で綴られる長編小説。他者との間にある、どうにも言い尽くせない、どうにも解消できないものを、どうにもならないままに、でもどうにか生きていく主人公に、あなたは何を想うだろうか。分厚いけど一気に読める渾身の一冊。
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