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村上 剛 先生(法学部)

2016.09.01


『ファスト&スロー : あなたの意思はどのように決まるか?』
ダニエル ・ カーネマン 著 ; 村井章子訳 (早川書房 , 2012)

「1日中ニューヨークの混雑した通りを散策し、名所見物を堪能したジェーンは、夜になって財布がなくなっていることに気づいた」(139頁)という文章を読んで記憶をテストすると、人は「名所」より「スリ」という単語をよりよく覚えているそうだ。そんな単語は出てきていないにもかかわらず。人間がいかに非合理で偏った考えを持ってしまう生き物なのかに驚かされる、認知・社会心理学の面白い研究結果が沢山紹介されている本。

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『運は数学にまかせなさい : 確率・統計に学ぶ処世術』
ジェフリー ・ S.ローゼンタール 著 ; 柴田裕之訳 (早川書房 , 2010)

夏休みにある観光地へ家族旅行をしていたら、同じく家族で訪れていた学校の友人にばったり出会い、驚いたことはないだろうか?実のところ、これはちっとも驚くに値しない「単なる偶然」らしい。人は統計的に意味のない事実にも、いかに勝手な意味を見出してしまうかという話から、それを「統計学的に考えたら」どういうことなるのかを丁寧に教えてくれる本。数式は出てこないので数学・統計嫌いでも読める。

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『先生はえらい』
内田 樹 著 (筑摩書房 , 2005)

今まで、尊敬できる「エライ」先生に会ったことはあるだろうか?あったとしたら、その人はどうして「エライ」のか?この質問に対するあなたの答えは、この本が教えてくれる「答え」とはたぶん違う。「エライ」先生とそうでない先生を分けるものはいったい何なのか?気になった諸君、是非この本を読んでみたまえ。「今までエライ先生なんかには出会えなかった!」という人には、ますますこの本を薦めたい。

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『恋ごころの科学』
松井 豊 著 (サイエンス社 , 1993)

「恋愛心理学」と書くと、「気になるあの人との恋を実らせるにはどうしたら良いか」が書いてある指南書を想像してしまうかもしれないが、そういう本ではない。巷に溢れている根拠の怪しい事実や、偏見にまみれたアドバイスは一切書かれていない。恋を真面目に科学した研究書である。ちょっと古いが、基本的な部分は今でも十分通じる内容であり、恋をするのには役に立たないけど、何より面白い。

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『夫婦ゲンカで男はなぜ黙るのか』
タラ ・ パーカー=ポープ 著 ; 古草秀子 訳 (NHK出版 , 2011)

こちらは「結婚を科学的に研究」した結果、分かったことをまとめた本である。よく、「結婚は人生の墓場」と言われるが、実際には多くの恩恵をもたらすという。結婚は(平均すると)男女を共に健康にさせ、(特に男性の)寿命を伸ばし、経済的な豊かさをもたらすそうだ。一方、「夫婦喧嘩は犬も食わない」ともいうが、喧嘩の仕方は夫婦のその後の健康に大きな影響を及ぼすという。結婚に興味がある人は読むべし。

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『政治哲学』
デイヴィッド ・ ミラー [著] ; 山岡 龍一 , 森 達也 訳 (岩波書店 , 2005)

政治哲学の入門書。政治哲学とは、「善き統治と悪しき統治の本性、原因、そして結果に関する探究」(3頁)だそうだ。本書は、14世紀中年にイタリアで描かれたフレスコ画から、政治哲学が何故必要なのかを読み取ることから始まる。そして、「自由とは何で、その限界はどこにあるのか?」や、「議会に女性やマイノリティが少ないことは何が問題なのか?」といった現代政治における根本的、中心的な問いに挑戦していく。

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『民主主義の条件』
砂原 庸介 著 (東洋経済新報社 , 2015)

こちらは、選挙、立法、行政に関する政治制度に焦点を当てた現代政治学の入門書である。マクロな統計データも駆使しつつ、近年の日本で起きた馴染みのある事例を折り混ぜながら、日本の政治制度の基本を平易な文章で解説してくれる。また、「ダメ、絶対」、「混ぜるなキケン!?」、「ケンカをやめて」、「看板に偽りあり」など、章のタイトルがキャッチーなので要点が掴みやすい。あまり教科書っぽくない教科書とも言える。

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『民主党政権失敗の検証 : 日本政治は何を活かすか』
日本再建イニシアティブ 著 (中央公論新社 , 2013)

民主党政権に失望した人は多い。民主党政権が「失敗した」と考える人はもっと多いだろう。しかし、同党への批判や批評はひとまず置いておいて、民主党政権が何に失敗し、何故失敗したのかをきちんと説明できる人はどれくらいいるだろうか?主要政策から選挙、党運営に至るまで、当時の民主党で中心的な役割を果たしていた議員へのインタビューを中心に、失敗の検証を真正面から試みた数少ない研究。

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『現代日本人の意識構造』
NHK放送文化研究所 編 (NHK出版 , 2015)

NHKの世論調査では、1973年から5年ごとに同じ質問を日本人に尋ね続けている。なかでも男女の性的役割分担に関する日本人の価値観は、この40年間で最も変化が大きかったらしい。夫が家事を「手伝う」のは当然である、という考えに同意する人の割合は、1973年には53%だったが、2013年には89%にまで上昇した。価値観の変化をデータから読む面白さと、それが男女・年齢によってどう異なるのかを考えるなど、世論調査分析の醍醐味を味わえる本。

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『「多様な意見」はなぜ正しいのか : 衆愚が集合知に変わるとき』
スコット ・ ペイジ 著 ; 水谷 淳 訳 (日経BP社 , 2009)

「衆愚政治」という言葉が指すように、大衆が集まって決め事をすると、バカな選択に至ってしまうという考え方がある。政治や問題解決は、やはり賢い人に任せるのが良いのだろうか?社会科学の多くの研究は、これとは逆の結果―多様な人が集まったほうが、より良い結果をもたらす―を示しているという。しかし、それには条件がある。人々のどのような多様性が、どんな時にエリートに勝てるのかを検証した、読み応えのある本。

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『ヤバい経済学 : 悪ガキ教授が世の裏側を探検する』
スティーヴン ・ D ・ レヴィット, スティーヴン ・ J ・ ダブナー [著] ; 望月 衛 訳 (東洋経済新報社 , 2007)

その後の「ヤバい○○学」の流れを作った最初のヤバい本。相撲の力士はいつ、どんなときに八百長試合をするのか?親が子につける名前は、子の将来の成功や失敗に影響するのか?など、とにかく面白いテーマと疑問にヤバい発想で取り組む。この本に「一貫したテーマなんてものはない」(15頁)そうだが、一見すると関係のなさそうな疑問を考えているうちに、実は人間の行動パターンに関するある共通点が浮かび上がってくる。

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『創造の方法学』
高根 正昭 著 (講談社 , 1979)

社会に関する素朴な疑問に答えるには、どうしたらいいか?ある現象を「説明する」とはどういうことか?本書は、実証的な研究方法の基礎を易しく教えてくれる。私が生まれた年に出版された本のため、ネタやアイデアも古いが、平易な文章でしっかりと基本を押さえた説明が愛され、今でも初版のまま(筆者は本書の出版後、惜しくも急逝されている)増刷を重ねる。2回生を対象とした私の演習授業でも教科書として利用している。

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