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仲間 裕子 先生(産業社会学部)


『美術史の終焉?』
ハンス・ベルティング、著元木幸一訳(勁草書房)

「直線的な発展史ではなく、何が"イメージ"を作るか、何がそのイメージを特定の時点で納得するに足る"真理"の像とするか、常に新しい問題の新しい解放の歴史」(著者)に注目した画期的な研究。従来の美術史研究の様式史観を越えた考察は、『イメージ人類学』(邦訳近刊予定)に継承されている。

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『イメージ : 視覚とメディア』
ジョン・バージャー著、伊藤俊治訳(PARCO出版)

現代の生活に溢れるイメージを「見ること」の構造から考察したもので、この"現在"の視点からたとえば、絵画と広告の"共通言語"が再検討されている。写真論を専門とする訳者自身の論文、「見ることのトポロジー」も補遺として収められている。

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『観察者の系譜 : 視覚空間の変容とモダニティ』
著ジョナサン・クレーリー著、遠藤知己訳(以文社)

視覚文化論の代表的文献。視覚性とテクノロジーの問題が主要テーマとして提起され、観察者を主体とした歴史の再検討からこの問題を解明しようとする。「視覚の諸問題は、本質的に身体と社会的権力の作用をめぐる問い」という主張はフーコーの思想に由来しながらも新たなスペクタクル概念を提示している。

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『イメージ・リテラシー工場 : フランスの新しい美術鑑賞法』
ジャン=クロード・フォザ他著、犬伏雅一他訳著(フィルムアート社)

フランスで教科書として使用されているイメージ・リテラシーの入門書。イメージの科学的、歴史的、美学的、イデオロギー的側面を重視した教育的内容だが、絵画、広告、写真、映画、コミックなどの多様なジャンルからの例示の豊富さによってイメージの読解が試みられている。

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『ドイツ・ロマン派風景画論 : 新しい風景画への模索』
神林恒道、仲間裕子編訳(三元社)

18世紀末から19世紀初期のドイツ・ロマン主義運動は自然と人間の相互関係を再検討する機会を与えてくれる。風景画論の執筆者、グスタヴ・カールスは画家、医者、自然科学者であり、多様な専門性から学んだ自然風景論を提出した。神への敬虔に支えられた自然観はモダニズム志向とは異なる近代性を教えている。

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『美術史をつくった女性たち : モダニズムの歩みのなかで』
神林恒道・仲間裕子編(勁草書房)

モダン・アートに貢献したシンディー・シャーマン、草間彌生、ペッギー・グッゲハイムなど9名の女性アーティスト、ギャレリスト、そして思想家についての論文集。女性たちの作品や活動が、社会による「差異」化を精査する導きの糸を与える

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『絵画の政治学』
リンダ・ノックリン著、坂上桂子訳(彩樹社)

美術を政治性の観点からとらえた研究。導入されている論文、「虚構のオリエント」はエドワード・サイードの『オリエンタリズム』(平凡社)を源泉とし、美術の領域から考察したもので、主に近代フランス絵画の分析から西洋の<他者>への眼差しが明かにされる。

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『芸術と政治をめぐる対話』
ミヒャエル・エンデ、ヨーゼフ・ボイス、丘沢静也訳(岩波書店)

『モモ』や『はてしない物語』の作家、エンデと戦後のドイツ芸術を代表するボイスとの対話で、社会構造や制度に対しての批判が展開されている。芸術の概念を拡大し、"社会彫刻"を提唱した亡きボイスの遺言ともいえる。「金を資本とする社会」から「人間の創造力を資本とする社会」への希望が語られる。

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『20世紀美術におけるプリミティヴィズム : 「部族的」なるものと「モダン」的なるものとの親縁性』(I、II巻)
ウィリアム・ルービン編、監修吉田憲司他(淡交社)

1984年にニューヨーク近代美術館で開催された同名の展覧会のための解説書。ピカソ、マティスを始めとした20世紀美術の着想源とされる主としてアフリカ、オセアニアの芸術との影響関係を個々の作品から実証を試みた大作。西欧を中心とした近代史観への疑問を発している。

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『ロザリンド・クラウス美術評論集 : オリジナリティーと反復』
ロザリンド・クラウス著、小西信之訳(リブロポート)

先鋭的な批評理論誌「オクトーバー」に発表した評論が主として収められている。著者はコロンビア大学美術史教授で、ポストモダニズム批評の旗手。歴史主義、実証主義を批判した理論的構築は、現代美術研究に欠かせない"古典的"書。

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『芸術と文明』
ケネス・クラーク著、河野徹訳(法政大学出版局)

イギリスの美術史家の名著。中世から近代に至る美術作品を豊かな学識でもって、時代の社会や文化とともに生き生きと描出している。啓蒙的な書で、美術史に関心のある人に薦めたい。同じ著者の『ザ・ヌード』(美術出版社他)も基本的な文献である。

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『判断力批判』(上・下)
イマニュエル・カント著、牧野英二訳(岩波書店)

美学理論の基本。推薦者はとくに崇高論の分析を重視している。リオタールの崇高概念によるアヴァンギャルド評価にもこのカントが根底にある。なお、ヴォルフガンク・ヴェルシュ著『感性の思考─美的リアリティの変容』(勁草書房)もこの観点から興味深い。

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『複製技術時代の芸術』
ヴァルター・ベンヤミン著、佐々木基一編(晶文社)

複製時代の技術による「アウラ」の喪失を説いた。伝統的な芸術と複製技術による映画や写真などの芸術と関係を、一回性/反復可能性、視覚的/触覚的などの対立概念によって分析し、今日自明である理論(オリジナル/コピーの差異の消失など)の先駆けとして、表現・メディア系の研究には必至のテクスト。

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『悲劇の誕生』
フリードリヒ・ニーチェ著、西尾幹二訳(中公文庫)

古代ギリシア悲劇をアポロ的/ディオニュソス的という対立概念で論じている。ニーチェの思想は、現代思想の源流のひとつであり、また20世紀の芸術観にも影響を与えたが、ニーチェの著書は必ず読書の喜びを与えてくれるだろう。ニーチェの著書のなかでも推薦者はとくに清新な若々しさを感じる書である。

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『夢判断』
ジーグムント・フロイト著、高橋義孝訳(新潮社)

ニーチェと並び現代思想の源流となった精神分析者フロイトの初期の書。シュルレアリスムの自動記述法に契機を与えた。無意識に抑圧されている欲求と夢との関係を分析、性愛衝動、夢における象徴的表現、知的業績、情動、願望充足などを論じている。フロイトの著もこの本に限らず一度は読んでほしい。

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『日本美の再発見』
ブルーノ・タウト著、篠田英雄訳(岩波新書)

著者は近代建築に貢献した、いわゆる建築のモダニズムの実践者である。京都の大学生である皆さんに、ぜひ伝統的な日本建築を体験してほしいという願いからこの書を推薦する。最終章の「永遠なるもの─桂離宮」がタウトの建築概念をもっとも反映する評論。

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『苔のむすまで : time exposed』
杉本博司著(新潮社)

国際的に評価されている現代美術家、杉本博司が主に自作について書き留めたもの。人類の歴史、日本の歴史、さまざまな歴史を繋ぎ合わせる写真作品は、過去-現在-未来の時空を読む者に認識させてくれる。エッセイの域を越えた芸術論として薦めたい。  (なお、6月7日まで国立国際美術館(大阪)で「杉本博司―歴史の歴史」展が開催されている。)

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