小幡 範雄 先生(政策科学部)
『持続可能な発展の経済学』
ハーマン・E・デイリー著、新田功・ 藏本忍・大森正之共訳(みすず書房)
持続可能な発展の条件は、投入と産出という2つの方向性を生態学的に持続可能な水準にとどめておくという事である。このことは量的成長を質的発展に置き換えることになる。この考え方に基づき、まず定常状態の経済理論について論じている。従来の経済学が無視してきた有限性とエントロピーと生態学的な相互依存性を軸として、環境マクロ経済学、国民純生産・経済計算、人口問題、自由貿易とグローバル化と環境共同性、環境倫理、宗教までを論及したものである。まさに、もうひとつの経済学の入門書である。
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『成長の限界 : 人類の選択』
ドネラ・H・メドウズ 、 デニス・L・メドウズ、 ヨルゲン・ランダース著、枝廣淳子訳(ダイヤモンド社)
『成長の限界』、『限界を超えて』、に続いての3冊目の本である。世界の多くの指標は、幾何級数的成長を続けている。有限な地球にあって、この幾何級数的な成長はどのような結果をもたらすのか。10種類のシナリオ(予測の条件)で、1900年から2100年までの世界の人口、資源、食糧、工業生産、汚染の5つについてシミュレーションしている。3冊目のこの本にはエコロジカル・フットプリントも計算されている。地球全体がどの方向に向かうのかしっかりとした見識を持つことも必要であろう。
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『エコロジカル・フットプリントの活用』
ニッキー・チェンバース、 クレイグ・シモンズ、 マティース・ワケナゲル著、五頭美知訳 (インターシフト)
朝、起きて顔を洗って、食事をし、バスに揺られて、大学について勉強をし、部活をし、コンパをしてと、私たちの何気無い生活が地球に負荷を与えている。もし、世界中の人たちが日本人と同じ暮らしを始めたら、地球は2.4個必要となる。地球の資源を踏み付けている。人間活動でこの地球資源を消費する量を計算する方法、計算した結果を数多くあげてある。エコロジカル・フットプリントなどを用いて、地球環境問題のわかりやすい見える化を図っていく必要がある。
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『環境危機をあおってはいけない : 地球環境のホントの実態』
ビョルン・ロンボルグ著 、山形浩生訳(文藝春秋)
地球環境問題、特に温暖化の警告、脅威論などの本はよく売れているようである。果たして、地球温暖化のメカニズム、予測は正しいのであろうか。IPCCは明確に確率を用いて明確に温暖化は進み、予測値も提供している。この著者は統計学者であり、多くの統計、資料を用いて食糧問題、石油資源問題、森林問題、水問題、化学物質問題などを対象にこれまでの多くの警告に対して反論を提供し、地球温暖化に至っては、温暖化が起こってもたいした問題にならないなどと主張を展開している。他の資料を集めてきて論を張るというのは些か問題があるように思える。しかし、2100年という先を見通すにはどうすればいいのかを別の角度から考えさせてくれる本でもある。
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『CSR経営 : 企業の社会的責任とステイクホルダー』
谷本寛治編著(中央経済社)
企業の社会的責任についてステイクホルダーとの関わり合いから論じたものである。新聞を見れば、今日、企業の不祥事は毎日のように記事になっている。企業は単に利益向上だけでは評価されなくなってきた。社会的責任を伴った利益とはどうあるべきかを現状、課題と分析し、今後のCSRマネジメントの指針を述べている。
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『全産業に拡大・高度化する環境ビジネス(新・地球環境ビジネス ; 2007-2008)』
エコビジネスネットワーク(産学社)
環境ビジネスのバイブルのような本です。環境ビジネスの全般的動向、参入方法、有望な事業分野について整理した後、環境ビジネスのあらゆる分野の個別の動向がかかれている。環境ビジネスは技術系環境ビジネスとソフト・サービス系環境ビジネスとに大別されている。
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『ディープエコノミー : 生命を育む経済へ』
ビル・マッキベン著、大槻敦子訳(英治出版)
人間社会での幸福とはどんな概念なのであろうか。量の拡大による経済政策はもはや、ピークオイルや気候変動などを見れば不可能であると論を展開する。量だけではなく質を追求する考え方が求められている。人間の満足度のためには、地域社会が鍵を握るとしている。多くの事例を挙げてもうひとつの経済学を示している。
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『食糧争奪 : 日本の食が世界から取り残される日』
柴田明夫著(日本経済新聞出版社)
日本は食糧小国である。中国、インドの幾何級数的な成長と食糧需要の高まり、旱魃や洪水といった異常気象、土地と水の不足、バイオエタノールと食糧(穀物)の争奪戦など、食糧は近い将来有限になりつつある。日本はどのような政策を展開すればこの食糧戦争に勝ち残れるのか。この戦略の提言も農業政策の点から考察されている
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『森と生きる。= Evolve with the forest』
稲本正著(角川書店)
木の温もりと豊かさを感じざるを得ない本である。人間の貪欲なまでの食生活が森林や環境破壊をもたらしたと言う。日本の歴史には自然との共生があったが、なぜ乱心化石文明になったのかが書かれている。木は二酸化炭素を吸収し、木材の提供、景観の創出、木工デザインなど木の文明を創り出してきた。競争進化を転換し、共生進化に基づく木を復権させる方法として、オークビレッジ、トヨタ白川郷自然學校での活動の試みも載せられている。
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『農業再建 : 真価問われる日本の農政』
生源寺眞一著(岩波書店)
日本の食料自給率は40%である。食品偽装、食の安全性、バイオ燃料など農と食に関する問題は話題に事欠かない。この本は食料と農業を複眼的に考えることで、日本の農政のあり方を展望している。農業・農村の環境価値、農地そのものの問題、農地制度など多面的に分析し、経営安定政策と地域資源保全施策が重要であるとしている。
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『もっと知りたい! 微生物の力』
下村徹著(技報堂出版)
微生物と聞くと腐るとか、病気の原因という悪いイメージがあるのではないだろうか。確かにそんな働きもあるが、汚水を浄化する、エネルギーを作る、発酵食品を作る、堆肥を作るなどなどの機能がある。この世の中には1gの土の中に1000万から1億匹の微生物がいると言われている。人間生活も微生物なしでは成立しない。このような人間にとって役に立つ微生物の多種多様な役割を整理した本である。
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『政策学への発想 : もうひとつの地方自治論』
佐々木信夫著(ぎょうせい)
著者は東京都に16年間勤めた後、大学で教えるようになった人である。この本は、このような著者の経歴から、政策学と現場(地方自治)との関わりを意識して書かれている。都市経営、経営政策と政策マンについて述べ、広く実際的な政策科学、政策過程論、計画行政等が論じられている。地方自治体で働きたい人には読んでもらいたい本である。
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『水俣病の科学』
西村肇・ 岡本達明著(日本評論社)
あの奇病とも思われた水俣病が発生してから約半世紀が過ぎて、この本は出版された。水俣病の原因はチッソの有機水銀(メチル水銀)が海中に放出され、食物連鎖で人体に入ったものと大概の公害・環境の書籍には書いてある。しかし、未解明なことが残っていたのである。メチル水銀は生成することは事実として確認できていたが、なぜ、無機水銀を触媒として用いて、アセチレンからアセトアルデヒドを合成するときに、副成するかという生成機構はなぞであったのである。この生成機構を明らかにし、「なぜ水俣で」という問いに答えたのである。
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『スロー・イズ・ビューティフル : 遅さとしての文化』
辻信一著(平凡社)
成長、効率、競争、景気など休む暇もなく拡大することに余念がない現代社会。私たちは何か落っことしてきたのでは無いだろうか。現在の常識とは異なる、もうひとつの経済、もうひとつの科学、もうひとつの食生活などを書き記したものである。なぜ、頑張らなくてはならないのか?と問いかけた答えが書いてある。速いばかりが能ではない、遅いという文化もある。
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『大江戸えころじー事情』
石川英輔著(講談社)
江戸時代は循環型社会といわれる。このような知的な動きを作った1冊である。他には『大江戸えねるぎー事情』、『大江戸リサイクル事情』がある。3000万人の人間が如何にしてエネルギーを作り出し、活動をしていたかが、原単位を用いて数量的に記述されている。江戸の暮らし向きを理解しながら、エネルギーのことがわかる本である。
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