奥田 宏司 先生(国際関係学部)
2018.03.01
推薦図書と推薦の言葉
私の推薦の基準は私の専門分野と離れて、学生諸君が大きな視野から物事を考える際に必要となる視点を提供してくれるような本を選んだ。日本宗教史、平和論、宇宙論、ホモ・サピエンス・日本人の起源などの本である。それと私の趣味である音楽の分野から「第2次大戦下の音楽家たち」に関する本を選んだ。
推薦者の研究の概要
私の専門分野は国際金融論・国際通貨論です。国際決済のあり様と国際通貨の諸機能を論じ、基軸通貨とはどのような通貨なのかを示そうとしてきました。そのうえで、ドル体制、ユーロ体制、人民元の「管理された国際化」、アベノミクス下の円相場などを研究しています。くわしくは以下の近著をご覧になってください。『国際通貨体制の動向』日本経済評論社、2017年。
『日本宗教史』
末木 文美士 著(岩波新書、2006年)
多くの学生諸君にとっては宗教は縁遠いものかもしれない。しかし、これまでの日本人の生活のいろいろな面に宗教は浸透している。したがって、ダイナミックな日本の宗教の展開の概説を学ぶことは日本人の考え方を知るうえで必要であろう。本書の表題は「日本宗教史」となっているが、宗教を論じながら日本の思想史を扱ったものであろうと思われる。末木氏の次の視点も重要であろう。「私は歴史を貫く一貫した<古層>を認めず、それを歴史的に形成されたものと考える」(4ページ)。
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『戦争の大問題 : それでも戦争を選ぶのか』
丹羽 宇一郎 著(東洋経済新報社、2017年)
本書は伊藤忠商事の社長・会長を経験したビジネスマンの著書である。以下の氏の文章で著者の意図がわかるであろう。「戦争をなくすために大事なことは、まず戦争を知ることである。日本人は72年間戦争をせずにきたが、同時に長い間戦争の真実を知ろうとせずに過ごしてきた。・・本書では戦争がいかに不条理、不合理で、愚かしく、残酷で、悲惨で不毛なものか、戦争の真実の姿を読者に伝えたかった」(282~283ページ)。
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『宇宙は無数にあるのか』
佐藤 勝彦 著(集英社新書、2013年)
宇宙はたくさんあり、私たちが生き、眺めているこの宇宙だけでなく、見ることも観測することもできない宇宙が他にもあるという(マルチバース)。われわれの宇宙にしても、137億年前に宇宙はインフレーションを起こし今も膨張しつつあるという。時間、空間などについても考えてみよう。
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『DNAで語る日本人起源論』
篠田 謙一 著(岩波書店、2015年)
書名は日本人起源論となっているが、内容的には人類の発生、ホモ・サピエンスの誕生が論じられ、それから「出アフリカ」からアジアへの経路、そして、日本人の起源と成立が論じられている。そのような章構成になっているから、広大な人類史のなかでの日本人の成立が位置づけられている。より、簡潔に記されている本では、同氏が監修されている次の本が手頃であろう。『ホモ・サピエンスの誕生と拡散』洋泉社、2017年
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『アイヌの歴史』
平山 裕人 著(明石書店、2014年)
上の人類史における日本人の成立、縄文人、弥生人について知ったことを踏まえて、日本列島の北方の一部にはアイヌの人たちが住んでいたことを知ってほしいと思う。縄文の人たちとアイヌの人たちはどのような関係にあるのだろうか。
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『戦争交響楽』
中川 右介 著(朝日新書、2016年)
ベートーベンやワーグナーを生んだドイツにおいてヒトラーが登場し、それによって亡命した音楽家、ドイツに留まりヒトラーの「宣伝塔」になった音楽家、独ソ戦争下のソ連で作曲された交響曲の演奏、戦後における「非ナチ化審理」を受けた音楽家。第2次大戦に翻弄された音楽家たちの生き様の視点から描かれた本である。
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