大塚 陽子 先生(政策科学部)
『フェミニズムと社会福祉政策』
杉本貴代栄編著(ミネルヴァ書房、2012年)
日本では社会福祉をフェミニズムの視点からアプローチした研究は欧米と比較すると多くありません。本書は社会福祉の制度・政策のなかにみえないジェンダー偏倚が存在し、女性が男性とは異なる問題を抱えていることを教えてくれます。DV、ホームレス、ボランティアなどの新しい課題に加え、海外の動向から日本の社会福祉政策と女性との関係の特徴がみえてきます。
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『よくわかる女性と福祉』
森田明美編著(ミネルヴァ書房、2011年)
女性は一生の間にどのような問題に直面し、社会福祉制度はそれをどのように支援しているのかを説明した良書です。ゆりかごから墓場まで、女性のライフステージに合わせた構成となっている点がわかりやすいです。
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『ルポ職場流産 : 雇用崩壊後の妊娠・出産・育児』
小林美希著(岩波書店、2011年)
日本における少子化の一因が女性の不安定で過酷な働き方にあることを知っていますか。この本を読むと日本における規制緩和後の働き方が男性を追い詰めるばかりでなく、いかに産む性である女性の身体およびそこに新しく宿った生命に悪影響を及ぼしているかを知り、愕然とします。
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『平等と効率の福祉革命 : 新しい女性の役割』
イエスタ・エスピン=アンデルセン [著](岩波書店、2011年)
似た学歴同士による結婚傾向が進むことにより、世帯収入や親の子どもへの時間投資に格差が開いて社会の二極化につながることに警鐘を鳴らした本です。これを食い止めるには、北欧のように、女性の新しい家族役割を支援し、男性のライフスタイルを女性化する、つまりジェンダー平等に合わせて家族支援をすることこそが福祉国家に効率性をもたらすキーであると著者は主張しています。
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『Gender equality and welfare politics in Scandinavia : the limits of political
ambition?』
edited by Kari Melby, Anna Birte-Ravn and Christina Carlsson Wetterberg(Policy
Press, 2009)
「北欧-スカンジナヴィア諸国といえば、ジェンダー・エンパワーメント指数が高く、男女平等の実現された社会といったイメージが私たちにはあります。しかし当のスカンジナヴィア諸国では、新自由主義や移民問題に直面するなかで平等問題は常に揺さぶられています。男女平等先進国が一筋縄では進んでいない側面を知りたい人にはお勧めの本です。
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『エネルギーと私たちの社会 : デンマークに学ぶ成熟社会』
ヨアン・S. ノルゴー, ベンテ・L. クリステンセン [著] (新評論 、2002年)
この本がデンマークで執筆されたのは1982年と30年前のことですが、環境と福祉を統合した社会を形成してゆくことが私たちの生活を持続可能にすることを気づかせてくれる本です。エネルギー問題や社会保障問題に直面する今だからこそ再読する価値があると思います。
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『知らないと怖い環境問題』
大塚徳勝著(共立出版、2010年)
環境問題は経済的・社会的側面から語られがちですが、その成因と現況をまず科学的な視点から理解しておかないと総合政策には発展させられません。環境問題の発生のしくみおよび因果関係を包括的に頭に入れておくためには相応しい本です。
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『ジェンダーと福祉国家 : 欧米におけるケア・労働・福祉』
メリー・デイリー, キャサリン・レイク著(ミネルヴァ書房、2009年)
欧米ではジェンダーと福祉国家に関する研究は数多くなされていますが、本研究はエスピン・アンデルセンの類型論にはとらわれずに、福祉国家と女性との関係をケア・労働・福祉の面から整理しなおしています。個人的には独創性と精密な分析という点で他のフェミニストによる研究よりも高く評価しています。
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『創造的福祉社会 : 「成長」後の社会構想と人間・地域・価値』
広井良典著(ちくま新書、2011年)
平等と持続可能性と効率性との関係を模索した研究。グローバル化のなかでは限りない経済成長が追求されますが、私たちは定常型社会を迎えています。そのなかにおいてローカル化をどのように再生させて福祉社会に結び付けてゆくかを説いた本です。
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『経済と消費社会』
長野ひろ子, 松本悠子編著(明石書店、2009年)
「前近代社会、近代社会、消費社会、グローバル社会と産業構造の変化とともにジェンダーは変容してきました。本書では私たちの経済的発展の諸相をジェンダー史の視点から考察しています。これまで女性史のなかでは女性の生産活動を見出そうとしてきたためにあまり論じられてこなかった消費活動(これも生産活動と表裏一体なのですが)との関わりに着目している点は興味深いと思います。
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