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桜井 政成 先生(政策科学部)

 


『連帯と承認 : グローバル化と個人化のなかの福祉国家』
武川正吾著(東京大学出版会、2007年

福祉国家論の良著。論文集なのでどこからでも読めるが、著者は近年、東アジアの福祉国家論について研究を深めており、その中で日本型福祉国家モデルを論じた部分は、この分野を学ぶ者にとって必読の章である。

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『アンデルセン、福祉を語る : 女性・子ども・高齢者』
G. エスピン‐アンデルセン著(NTT出版、2008年)

本書は、福祉国家の理論ではあまりにも有名な「福祉国家レジーム」を提唱した著者の演説した内容である。ヨーロッパの高齢者・女性・児童福祉政策の評価を、それまでの学術的実証研究の成果に基づきまとめている。日本ではこうした学術的成果が社会政策に反映されることはあまりないように思う。

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『生活保障 : 排除しない社会へ』
宮本太郎著(岩波新書、2009年)

「福祉から労働へ」という積極的労働政策(著者の言葉を借りれば「アクティベーション」)について、その意義と北欧での政策が入門的に理解できる。社会的企業が生活保障の中でどのような役割を果たすことができるのかについてもふれている。

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『べてるの家の「非」援助論 : そのままでいいと思えるための25章』
浦河べてるの家著(医学書院、2002年)

排除されない社会とは何か、ノーマライゼーションとは何かを考えるための一冊。北海道・浦河にある「べてるの家」は精神障害をかかえた人たちの有限会社・社会福祉法人である。しかし、「いつも問題だらけ、それで順調」、「安心してサボれる会社づくり」といった実践は、ケアや福祉の既存概念を大きく覆す。

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『単身急増社会の衝撃』
藤森克彦著(日本経済新聞出版社、2010年)

「無縁社会ブーム」で出版された本がいくつかある中で、これは単身者急増社会に焦点を絞って論点を明確にしている点と、データも安易に使わずにしっかりしたものを掲載している点が評価できる。また、ヨーロッパでとられている先進的な政策についても紹介しており、単に危機感を煽るだけでなく責任感が感じられる。

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『忘れられた日本人』
宮本常一著(岩波文庫 、1984年)

震災や無縁社会などの社会現象を受け、地域コミュニティが改めて注目されている。「昔はよかった」というような懐古主義に陥らないよう、近現代の日本の地域社会がどのようなものであったのかをきちんと理解しておきたい。この点において本書の著者である宮本常一らの民俗学の成果は学んでおいて損はない。

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『日本人のしつけは衰退したか : 「教育する家族」のゆくえ』
広田照幸著(講談社現代新書、1999年)

かつては地域社会で子どもの教育やしつけがなされていたが、現代ではそれは衰退した、という話をよく聞く。しかしかつての日本のムラ社会の有り様からは、それは現在とはまったく意味合いが異なっていたと同書では指摘。安易に「地域教育」を語る前に読んでおきたい。

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『日本における市民社会の二重構造 : 政策提言なきメンバー達』
ロバート・ペッカネン著(木鐸社、2008年)

日本の市民社会(ここではNPOなどの市民活動の組織やボランティアなどの個人を指す)について、アメリカのそれとの比較を行いつつ、多様な角度から分析をしている。日本の市民社会がローカルには豊富な関係性(ソーシャルキャピタル)を有するのに、ナショナルには政策提言能力が弱いという指摘は興味深い。

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『NPOと公共サービス : 政府と民間のパートナーシップ』
L.M.サラモン著(ミネルヴァ書房、2007年)

NPO研究の一つに、政府との関係性を考えるものがある。ヨーロッパでもアメリカでもNPOは政府とかなり密接な関係を持って発展してきている。ただ、アメリカでは、この著書で述べられるような、自立したNPO像に基づく理論を構築してきている。トクヴィルの『アメリカのデモクラシー』も合わせて読んでおくと理解が深まる。

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『リーディングスネットワーク論 : 家族・コミュニティ・社会関係資本』
野沢慎司編・監訳(勁草書房、2006年)

社会ネットワーク理論の構築に多大な影響を与えた論文を編んだリーディングス。いわば「古典」が一冊にまとまっており、また解題もついているので、本書を一通り読めば、社会ネットワーク理論の基礎的な考え方はつかむことができる。

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『ソーシャル・キャピタル : 社会構造と行為の理論』
ナン・リン著(ミネルヴァ書房、2008年)

社会ネットワーク理論に基づいて体系的にソーシャルキャピタル(社会関係資本)論を学ぶのであれば、上記の『リーディングス ネットワーク論』とあわせ、読んでおきたい一冊。歯ごたえのある理論書であるが、階層やジェンダー、社会運動など、社会学において重要となるキー概念との接点を意欲的に分析しており、興味深いはず。

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『制度と文化 : 組織を動かす見えない力』
佐藤郁哉, 山田真茂留著(日本経済新聞社、2004年)

近年、社会学的な組織論ではひとつのブームとなっている新制度派組織理論を理解するための一冊。平易な文章で読みやすく、内容的には組織文化論から始まって、新制度派組織理論の基礎的な概念である制度的同型化や制度起業家について一通り理解することができる。

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『災害ユートピア : なぜそのとき特別な共同体が立ち上がるのか』
レベッカ・ソルニット著(亜紀書房、2010年)

奇しくも東日本大震災前に出版された訳書。日本人は我慢強いという報道が国内外でなされたが、著者によれば、非常時には人びとは案外冷静に行動するのだという。むしろ指導的立場の人間の方がパニックに陥りがちで、「二次災害」を誘発するとのこと。ルポタージュで情報に偏りがあり仮説的ではあるが、納得させられる指摘。

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『震災ボランティアの社会学 : 「ボランティア=NPO」社会の可能性』
山下祐介, 菅磨志保著(ミネルヴァ書房 、2002年)

東日本大震災発生後、被災地を訪れたボランティアの人数は、阪神大震災時を大きく下回っている(2011年7月現在)。様々な要因があるが、今回のボランティア活動を検証するためには阪神大震災時の震災ボランティアとは何だったのかを振り返る必要がある。本書はそうした研究書として貴重な一冊。

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『贈与論』
マルセル・モース著(ちくま学芸文庫、2009年 他)

寄付(義捐金)やボランティアとは何かを考えるための一冊。筆者は、ポトラッチやクラといった世界中の伝統社会にみられる贈与の慣習に、「義務のメカニズム」が存在することを明らかにし、純粋贈与の存在を否定した。本書は(社会)構造主義にも大きな影響を与えており、その古典としても必読書である。

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『「ボランティア」の誕生と終焉 : 「贈与のパラドックス」の知識社会学』
仁平典宏著(名古屋大学出版会、2011年)

与をキー概念として、日本のボランティア概念の成立過程を読み解く労作。著者は、ボランティアによる自己効用的な「生きがい」の追及が、利用者の疎外を生み反発を受け、有償ボランティアなどの互酬性に基づく「洗練された解決法」を生んだことを明らかにする。しかしその結果、ボランティアは「終焉」を迎え、新自由主義的な政治に動員されていくのだと分析している。

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『「社会を変える」お金の使い方 : 投票としての寄付投資としての寄付』
駒崎弘樹著(英治出版、2010年)

2011年は年初のタイガーマスク現象に始まり、震災での義捐金や、NPO法人の寄付優遇税制改正など、まさに「寄付元年」と言うべき年であった。著者は寄付の持つ社会的な意義について、市民活動の立場から分かりやすく語る。さらに寄付についての様々な論点を理解したい人には『寄付白書』(日本経団連出版)がお勧め。

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『社会科学と社会政策にかかわる認識の「客観性」』
マックス・ヴェーバー著(岩波文庫、1998年)

いわゆる「客観性論文」として有名な、社会科学の古典。認識理想としての「価値自由」と方法概念としての「理念型」を定式化し、後世に大きな影響を与えたとされる。とはいえそれほど難解ではないので、とくに院生の方には、研究とは何かを考える上で読んでおいてほしい。

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『創造の方法学』
高根正昭著(講談社現代新書、1979年)

この本は、著者が、アメリカ留学を経て習得した(アメリカ的な)社会科学の方法論について、豊富なエピソードを交えながら、平易に説明した入門書である。30年以上前に出版された本であるが、重要な点はいまでもそのままであると言ってよい。定義とは何か、仮説とは何か、といった、レポートや卒論の執筆で混乱しがちな概念をきちんと押さえておくために、本書の一読を薦めたい。

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『市民の日本語』
加藤哲夫著(ひつじ書房、2002年)

2011年8月に逝去した、せんだい・みやぎNPOセンター代表の著。平易な文体と経験からの豊富な事例で、市民活動とは何かについて、リアリティを持って語る。著者は、市民と行政とは、言葉が「異なっている」と主張する。その差異を理解し、お互いに歩み寄ることこそが「市民参加」なのである。

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『キュレーションの時代 : 「つながり」の情報革命が始まる』
佐々木俊尚著(ちくま新書、2011年)

かつて、梅田持夫の『ウェブ進化論』を読んで新しい時代の到来を感じたが、本書はその続編かのような印象だった。中東の政変や日本での震災支援においては、SNSやツイッターが大きな役割を果たした。もはやリアルとバーチャルなどという区別も無意味な時代。ウェブを活用した「学び方・生き方」を学ぶために読んでおきたい一冊。

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