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高村 学人 先生(政策科学部)

 


『国家 (上)(下)』
プラトン著(岩波文庫)

古典とは難解なものであるのが常だが、古典中の古典である本書は、なぜかどんな人でもその世界に引き込んでしまう。本書でのソクラテスの対話の流れに一度身を委ねてほしい。紀元前のギリシャ時代にここまで論理的にあらゆる物事が考えられ、議論し尽くされていたことに人類世界の偉大さを発見するはずだ。そのような知への敬意がフィロソフィーの出発点となる。

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『人間の条件』
ハンナ・アレント著(ちくま学芸文庫)

公共性をめぐる議論が今日盛んであるが、本書のようなギリシアでの「政治」の成立を丹念に描き出す本を是非学生には読んで欲しい。そこにこそ西欧における「政治」が常に参照点としてきたモデルがあり、今日の公共性論も結局のところ、そこが参照点となるからである。

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『農村法律問題』
末弘厳太郎著(農山漁村文化協会)
改造社の版が展示にはベスト)

大正時代の日本の農村は、地主小作間の対立、共有地の収奪など常に不安定な状態にあり、社会問題が激化していた。本書は、東大の民法学者である末弘が日本各地の農村を調査して、実態に基づきあるべき法解釈、法政策を説くものである。法社会学がどういうものかを知るには本書が一番である。大正時代の調査であるが、今日でも新鮮さが随所にあふれる一冊である。

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『ある法学者の軌跡』
川島武宜著(岩波書店)

そもそも法学とは何であるのか、そんなことを迷ったら本書を読むと良い。本書は、戦後日本の最大の民法・法社会学者である川島武宜の自叙伝であるが、法律学や法社会学がいかにしたら科学であり得るのか、という問いが探求され続けており、研究入門書としても興味深く読める。研究者の世界を知るにはこの本が良い。

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『日本の社会科学』
石田雄著(東京大学出版会)

研究は、真理の探究を目指して行われるものであるが、実際のところ、各研究は、歴史的状況に規定されて行われる。またこのような歴史的規定性があるからこそ、良い研究は、新しい時代を拓いていく兆しになりうるのである。本書を読んで、「日本の社会科学」の歴史的規定性を十分理解しながら、新しい時代の社会科学を展望して欲しい。

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『「日本人」の境界』
小熊英二著(新曜社)

構築主義の立場に立つ理論書は、今日、沢山あるが、そのようなものを読むよりも、本書のように、日本の近代史の展開に即して、各政治的場面に応じて<日本人> が構築される過程を克明に描き出す本を読むことをお奨めしたい。日頃、自明としていることも歴史的構築物として相対化し、新たな創造の構想が可能になる筈だ。大著であるが、面白いので、一気に読み通せると思う。

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『社会分業論』
デュルケム著(講談社文庫)

社会は分業によって成り立っている。この分業のあり方の違いに注目して、各社会の比較を行ったのが本書である。この当時、デュルケムが展望していた望ましい分業の発展方向と今日の社会はかなり異なったものになったが、なぜデュルケムが描いた方向に社会が発展しなかったのか、これは、社会学が挑まねばならない最大のテーマだ。

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『宗教・社会論集』
ウェーバー著(河出書房)

 「ウェーバーは何から読めば良いのか」、これは難しい問いだが、ここでは、『宗教・社会論集』を奨めたい。収録論文の「プロテスタンティズムの教派と資本主義の精神」は、短いがウェーバー社会学のエッセンスが凝縮されているし、現代アメリカ社会論にも繋がる名論文だ。「宗教社会学」の序文も素晴らしいく、「職業としての学問」も本論集に収録されている。本書の次に佐藤俊樹『近代・組織・資本主義』ミネルヴァ書房を読むとなお良い。

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『家族・私有財産・国家の起源』
エンゲルス著(岩波文庫)

「マルクスを読み始めるには何を読んだら良いですか」と学生に聞かれると、必ず奨めているのがこの本。エンゲルスの著作であるが、唯物論史観のエッセンスがここに凝縮されている。読みやすい本。

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『制度論の構図 』
盛山和夫著(創文社)

「制度」への注目は、政治学、経済学、歴史学などの社会諸科学の近年のトレンドである。各領域で実証分析を実施するためのマニュアルは数多く存在する。しかし、本書は、「制度」そのもの根拠を根源的に問い続ける点で異色の存在である。本書のような意味論の立場は、政策分析のツールとして役に立たないだろう。しかし、経済学帝国主義の今日においてこそ、本格的理論書との対話によって社会の成り立ちを原理的に考察することが不可欠だ。

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『自由と特権の距離』
石川健治著(日本評論社)

学生にはかなり難しい本かもしれないが、是非チャレンジして欲しい一冊。法律学は、細かなことを個々バラバラにやっているように見えるかもしれないが、本書は、読むとその見方は一新されるだろう。本書は、独仏の公法・私法学を縦横無尽に横断しながら、法理論の壮大さと理論同士の緊張関係を鮮やかに描き出す。はやりの法哲学系の本を沢山読むより、この本一冊を何度もしっかり読んで欲しい。

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『民法総論』
大村敦志著(岩波書店)

各種試験のために民法を一通り勉強してみたが、そこに無味乾燥感を抱いてしまう学生にぜひお奨めしたい。民法の成り立ち、民法の思想、民法の方法の面白いエッセンスがわかりやすく凝縮された本であり、民法学のファンになること間違いなし。学問としての法学へ導入は、フランスでは民法総論の役割。民法未習者は、大村敦志『家族法』有斐閣からスタートすると良い。

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『自治体発の政策革新』
伊藤修一郎著(木鐸社)

政策研究として最も良質な本の一つ。景観条例のイノヴェーション・波及過程を扱うが、理論モデルが鮮やか明晰であり、多様な分析手法を駆使して仮説を説得的に検証する。フィールド調査に基づくケーススタディも素晴らしい。地方自治体への暖かな眼差しを感ぜられるところも良い。政策科学部の学生にぜひ読んでほしい。

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『戦争を記憶する』
藤原 帰一著(講談社現代新書)

平和と民主主義の実現を理念とする立命館大学であるから、この本も是非お奨めしたい。第二次世界大戦は各国に大きな被害を与えたが、その戦争の記憶の仕方、記憶の展示の仕方は、各国、各時代によってかなり異なる。本書は、各国の戦争ミュージアムの比較からその点を非常に鋭く分析する。読了後には、展示会・ミュージアムへの見方も大きく変わってくる筈だ。

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『墓と埋葬の社会史』
森 謙二著(講談社現代新書)

「○○家の墓」という形で、先祖の墓を家単位で守り、そこに自分達も入るという日本の風習は、実は、明治政府の統治策による<創り出された伝統>であった。本書でのヨーロッパの公園墓地、江戸時代の総墓制の説明の前にわれわれの常識は揺さぶられるだろう。埋葬の多様化が今日進みつつあるが、歴史・比較の分析をしっかり行っている本書を読むことで、死と家族のあり方を再考する出発点とすると良い。

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『フルトヴェングラー』
脇圭平・芦津丈夫著(岩波書店(新書版ではなく、特装版で!))

クラシックは、西欧の音楽史であり、それは、西欧の精神史との関連で理解されることで、鑑賞の楽しみが増す。本書は、20世紀最大の指揮者フルトヴェングラーの人間像と音楽の魅力を余すところなく描く。ナチスへの協力が問題にされてきたヴェングラーであるが、ドイツに留まり楽譜にあえて忠実に演奏した(Notengetreue)ことにこそ音楽家としての抵抗と創造性を読み取る本書の逆説的解釈は、スリリングだ。本書後半の鼎談に参加の丸山眞男の議論は圧巻。併せて『丸山眞男 音楽の対話』文春新書も。

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『アソシアシオンへの自由』
高村 学人著(勁草書房)

最後に僭越ながら拙著も紹介する。すでに紹介した本から育まれた問題関心を、フランスの近現代の法と社会との関係、中間団体の位置づけについて焦点を当てながら、社会学的に探求した一冊。渋沢クローデル(ルイヴィトンジャパン)賞、日本法社会学会学会奨励賞を受賞した。

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