竹村 はるみ 先生(文学部)
『妖精の女王(1)(2)(3)(4)』(ちくま文庫)
エドマンド・スペンサー著 ; 和田勇一, 福田昇八訳(筑摩書房、2005年)
イギリス叙事詩の名作は、騎士道ロマンスの名作でもある。全6巻から成り、男装の騎士ブリットマートがせつない女心を甲冑に隠して活躍する第3巻は特にお薦め。尚、妖精の女王とは、時の女王エリザベス一世を指す。隠された意味を考えながら読むと、さらに楽しい。
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『カスティリオーネ宮廷人 』(東海大学古典叢書)
カスティリオーネ[著] ; 清水純一, 岩倉具忠, 天野恵訳註(東海大学出版会、1987年)
理想の男性とは?理想の恋とは?宮廷人に相応しい冗談の流儀とは?ルネサンスの粋を極めたウルビーノの宮廷に集う男女の談話を再現した『宮廷人』は、16世紀ヨーロッパで礼儀作法書のベストセラーとなった。これぞ真のプラトニック・ラブとも言うべき、新プラトン主義的な恋愛観だけでも一読の価値あり。
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『シェイクスピアの民衆世界』
青山誠子著(研究社、1991年)
シェイクスピアは難しそう―そう思っている人にお薦めの本。妖精、魔女、金貸し、娼婦、ペテン師等々、シェイクスピアの劇世界は、近代初期ロンドンの猥雑な民衆文化にどっぷり浸かっている。いかがわしくも楽しいロンドンの空気を呼吸し、その創造的エネルギーを体感してみよう。
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『リヴァサイドのシェイクスピア : 原文で読む楽しさ』
尾崎寄春著(英宝社、1994年)
シェイクスピアの入門書を一冊挙げるなら、迷わずこの本を選びたい。当時の劇場の様子に始まり、戯曲を「読む」時のコツ、舞台上の様々な約束事、シェイクスピアの英語の特徴等がわかりやすく解説されている。文体はですます調で、名講義を聞いている気分になる。
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『劇場のシェイクスピア』
喜志哲雄著(早川書房、1991年)
芝居の台詞は、普通の言葉とどう違うのか?全ての戯曲は上演されることを前提として書かれている―この当たり前だが忘れられがちな点を見据えた本書を読めば、演劇というジャンルだけが有する可能性の大きさに驚き、そして深い感動をおぼえるはず。
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『洒落者たちのイギリス史 : 騎士の国から紳士の国へ』(平凡社ライブラリー)
川北稔著(平凡社、1993年)
ジェントルマンの国イギリスが男性ファッションの聖地であることは有名だが、その歴史を知っているか?優美なひだ襟、美脚を強調したタイツ、膨らんだ袖―16世紀の肖像画を見れば、お洒落は男性の文化だったことがよくわかる。イギリス社会史・文化史の好著。
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『女王陛下の興行師たち : エリザベス朝演劇の光と影』
玉泉八州男著(芸立出版、1984年)
ロンドンにイギリス初の商業劇場が建設されたのは、エリザベス一世が統治した16世紀。演劇の都ロンドンのはじまりである。旅回りの芸人から劇団の設立へ―宗教改革真っ只中の混沌とした時代の中で民衆演劇が辿った隆盛と変容のプロセスを跡付ける演劇史の名著。
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『記憶術』
フランセス・A.イエイツ著 ; 青木信義[ほか]訳(水声社、1993年)
古代ギリシャ・ローマから中世を経てルネサンス期まで、「人間のもつ能力の中でも最も根源的で最も捉えがたい」能力である記憶の歴史を辿った浩瀚の書。哲学、文学、歴史、美術と、人文学の全領域を横断する壮大なスケールで、「記憶術」なる秘術が明かされる。
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『「徒弟」たちのイギリス文学 : 小説はいかに誕生したか』
原英一著(岩波書店、2012年)
小説は近代文化の所産であり、その誕生は詩や演劇よりもはるかに遅かったことは、意外と認識されていない。小説誕生の経緯をロンドン市民文化の台頭に求める本書の魅力は、演劇の衰退と小説の勃興を地続きに捉える点にある。芝居好きにも小説好きにもお薦めの一書。
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『わが友マキアヴェッリ : フィレンツェ存亡(1)(2)(3)』(新潮文庫)
塩野七生著(新潮社、2010年)
『君主論』を著したマキアヴェッリは、目的達成のためには手段を選ばない冷酷な権力至上主義を意味するマキャヴェリズムの語源になった。だが、人間マキアヴェッリに鋭く迫る本書を読めば、その挫折と懊悩と見果てぬ夢に胸が熱くなる。読んだ後にマキアヴェッリを「わが友」と感じさせる塩野七生の筆力には脱帽。
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『三四郎』(岩波文庫)
夏目漱石作(岩波書店、2010年)
英文学と関係ないぞ、と思うなかれ。夏目漱石は英文学者でもあった。私の大学受験生時代の愛読書。もはや何で悩んでいるのかもわからない若者特有の悶々とした鬱屈感の描き方が素晴らしく、ぜひ学生時代に読んでほしい。大学生になったら美禰子さんのような女性になろうと憧れたのも懐かしい思い出。
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『Shakespeare's festive comedy : a study of dramatic form and its relation to social custom』
C. L. Barber (Princeton University Press, 2012)
シェイクスピアの喜劇は、祭りとよく似た構造を持つ。両者の共通点は、日常の秩序が一時的に崩壊し、価値観の転倒が生じる点に見出される。バーバーの論理は至ってシンプルだが、それが意味するところは実に奥深い。自由闊達で人間味のある作品の読みも魅力的。
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『Bring up the bodies』
Hilary Mantel (Fourth Estate, 2012)
大英図書館でのヘンリー八世展(2009年)、大ヒットになったテレビドラマThe Tudorsと、今ヘンリー八世とその時代はちょっとしたブームを迎えている。2009年度のブッカー賞を受賞した著者の最新作は、受賞作Wolf Hallの続編。アン・ブリン処刑の鍵を握るトマス・クロムウェルを主人公に据え、その心理の闇を描く秀作。
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『The force of poetry』
Christopher Ricks (Clarendon Press, 1995)
詩は、精緻に作られた言葉の芸術という意味では、まさに文学の至宝と呼ぶべきジャンルである。繊細だからこそ、薄皮をはがすようにその意味を探る試みが楽しい。中世詩から現代詩まで幅広く扱い、平易な英語で、英詩と文学批評の醍醐味に開眼させてくれる書。
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『ルネサンスの祝祭 : 王権と芸術(上)(下)』
ロイ・ストロング著 ; 星和彦訳(平凡社、1987年)
宮廷仮面劇、馬上槍試合、戴冠式のパレードといった、ルネサンス期ヨーロッパ宮廷で流行した様々な祝祭に見られる君主崇拝の理念を辿った書。王権と芸術の互恵的な関係を歴史化し、祝祭文化を帝国のシンボリズムの一大メディアとして位置づける視点が新鮮。
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