冨田 美香 先生(映像学部)
『京都映画図絵 : 日本映画は京都から始まった』
鴇明浩・ 京都キネマ探偵団編(フィルムアート社)
かつて日本のハリウッドと称された映画都市・京都の案内書。京都キネマ探偵団の若手メンバーが、新旧の撮影所、ロケ地、映画人旧宅やお墓、映画史跡を探索し、イラストつきでわかりやすく解説。本書を手に、千本~衣笠~太秦界隈を散策すると、まさに映画文化のメッカだったことを実感できる、マニアックな映画旅への誘い書。
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『日本映画の若き日々』(中公文庫 ; M153-2)
稲垣浩著(中央公論社)
1920~30年代を鳴滝、太秦で若き映画監督として過ごした名匠稲垣浩が、当時の京都映画界やカツドウ屋達を追想した軽快なエッセイ。「京都映画散歩」の章は、鳴滝、等持院、嵯峨野、等々と地名ごとにエピソードがまとめられ、散策欲求を強烈に誘う。『ひげとちょんまげ : 生きている映画史』(中公文庫/1981年)もお薦め。
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『映画理論集成』
岩本憲児・ 波多野哲朗編 (フィルムアート社)
1982年に発行された、日本で初めての映画理論アンソロジー書。収録論文の魅力もさることながら、本書自体が映画・映像研究史料といえる。近年、続編2冊の発行を機に再刊されたが、お薦めは銀色表紙の粟津潔装丁版。名誌『季刊フィルム』から続く、粟津とフィルムアート社との共闘関係の証。続編2冊も必読書。
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『映画理論講義 : 映像の理解と探究のために』
J.オーモン [ほか] 著、武田潔訳(勁草書房)
映画・映像メディアを学ぶうえでの映画理論入門書。「映画と物語」「映画と観客」の章は、映像メディアに限らず、「物語」を考察する人にとっては必読。時代や国によってまちまちの訳語も、巻末の対訳表で整理。廣田清子の涼やかな装丁も良い。あわせてクリスチャン・メッツの『映画と精神分析 : 想像的シニフィアン』(白水社/1981年)もお薦めしたい。
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『「フィルム・アート」 : 映画芸術入門』
デイヴィッド・ボードウェル、 クリスティン・トンプソン著、飯岡詩朗 [ほか] 訳(名古屋大学出版会)
1979年の初版以来、各国の大学で映画・映像研究の教科書として活用されている入門書。特に、「映画形式」「映画スタイル」の章は、基本中の基本で、これをおさえると、映像の捉えかたが深まること間違いなし。深く学びたい人には、各章の「さらなる研究のために」書誌の利用と、索引の映画作品鑑賞をお薦めする。
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『映画術 : ヒッチコック』
トリュフォー著、山田宏一・ 蓮實重彦訳(晶文社)
後に映画監督となるF.トリュフォーが、敬愛するサスペンスの巨匠A.ヒッチコックに50時間に及ぶインタビューを実施。シネフィル青年と老匠の対話をとおして、映画の見方、魅力、作り方が綴られる。山田、蓮實両氏の徹底した翻訳仕事、豪華な協力メンバー、平野甲賀の装丁により、本書は原書以上の世界的定本に仕上がった。
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『中井正一とその時代』
高島直之著(青弓社)
1920~1930年代の刺激的な“機械の美学”の時代と、美学者・中井正一の論考と活動を、この時代の視覚文化の代表である映画を軸に紹介した概説書。主題を的確に表現した伊勢功治の装丁も秀逸。この時代の各芸術運動や、杉浦康平の装丁が美しい『中井正一全集』(美術出版社)への導入書としてもお薦めしたい。
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『「故郷」という物語 : 都市空間の歴史学』
成田龍一著(吉川弘文館)
明治から昭和初期にかけて、「故郷」が都市での語りを経て、特別な空間として立ち現れ、故郷-都市-国家という概念を構築していく過程を詳述。故郷や地域を舞台にした「物語」を考察する際には必読の書。著者は日本近現代史の専門で、日本女子大学教授。他の著書も面白い。
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『可視化された帝国 : 近代日本の行幸啓』
原武史著(みすず書房)
明治から昭和初期にかけて天皇・皇太子が全国を鉄道でまわった行幸啓。その詳細な記録から、「視覚的支配」と「帝国の可視化」の成立過程を論証。視覚的支配と鉄道は、映画メディアとも深い関係があり、かなり面白い。著者は、日本政治思想史の専門で、明治学院大教授。他の著書も、特に鉄道絡みは楽しめる。
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『表象空間の近代 : 明治「日本」のメディア編制』
李孝徳著(新曜社)
江戸から明治への表象コードの変容を、コミュニケーション=メディア=言語・複製技術・教育・交通の変容から論証。各メディアにおける「空間」分析をとおして、国民国家の生成を見据える。各考察の深さ、風景や視点分析の面白さで読み応え十分。筆者は、表象文化論の専門で、東京外国語大学准教授。
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『近代日本の視覚的経験 : 絵地図と古写真の世界』
中西僚太郎・ 関戸明子編(ナカニシヤ出版)
明治期に、印刷技術の発達とツーリズムへの欲求に伴って、大流行した鳥瞰図、都市図、風景写真、観光案内リーフレットなどのビジュアル・メディア。これら「空間」に対する視覚的経験をとおして、近代日本において醸成された「空間」「世界」認識を考察。吉田初三郎の鳥瞰図は勿論、絵地図や写真の図版が多数収録あり。
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『映画渡世 : マキノ雅広自伝 地の巻・天の巻』(ちくま文庫)
マキノ雅広著(筑摩書房)
“日本映画の父”マキノ省三の長男で、戦前戦後を通して261本の映画を撮り続けたマキノ雅弘監督の痛快・怒涛の自伝。語り口も生き様もすべてが“芸”と化しており、偉大な父をもった息子の生涯のドラマとしても面白い。山根、山田両氏が全精力を傾けた緻密な編纂と、杉浦康平+鈴木一誌+郡幸男の装丁が見事な伝説的な書。
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『シネアスト許泳の「昭和」 : 植民地下で映画づくりに奔走した一朝鮮人の軌跡』
内海愛子・ 村井吉敬共著(凱風社)
昭和の時代に、日本、朝鮮、インドネシアの三つの国で、日夏英太郎、許泳(ホヨン)、ドクトル・フユンの三つの名をもって生きた一人の朝鮮人映画人(1908-1952)の軌跡。大東亜共栄圏下でアイデンティティを失い、自らの過去を葬るかのように名前と経歴を変えていった状況と、それぞれの国の反響を明らかにする。
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