鳥山 純子 先生(国際関係学部)
2020.3.2
専門分野・ディシプリン
ジェンダー論、中東ジェンダー研究、文化人類学
研究概要
日常生活の地平から、エジプトやレバノンといった中東地域の暮らしや生き方について研究をしています。その際、性別を切り口に格差や人の痛みに迫るジェンダー学や、人間の在り方を総体的に考える文化人類学の考え方を手掛かりにしています。これまでは、中東地域をフィールドに、女性にとっての仕事と家庭の両立や、女性が仕事に見出す意味、女性にとっての生殖、さらには学校教育システムと社会構造の関係について考えてきました。
出身地域と異なる文化や社会を扱う人類学は、自分の当たり前や常識が「小さな世界」でしか通用しないことを教えてくれます。一方ジェンダー学は、人が抱える生きづらさを、自分の内側だけでなく社会に探ることを教えてくれます。どちらの学問も、今の当たり前が絶対ではなく、今とは違った生き方があることを見せてくれます。それは現状へのアンチテーゼであるだけでなく、自分に感じる息苦しさを笑い飛ばす力にもなり得ます。
『ジェンダー論をつかむ』
千田 有紀, 中西 祐子, 青山 薫 著(有斐閣、2013年)
理論としての「ジェンダー」を理解するための良書です。一般的な文脈で用いられる「ジェンダー」は、しばしば女性と同義語で用いられます。しかし「ジェンダー」という用語の主眼は女性問題を可視化させるものにとどまりません。本書は、社会構築主義を用いて格差を考える概念としての「ジェンダー」がわかりやすく解説されています。
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『はじめて学ぶLGBT 基礎からトレンドまで』
石田 仁 著 (ナツメ社、2019年)
性的少数者(規範的でない性・ジェンダーを生きる人々)について理解しようと思ったらまず手に取ってほしい一冊です。性的少数者への配慮の足る対応について学ぶだけでなく、性別を男女で分け一人の性別は変化しない、という二項対立的な思考にもきちんと挑戦してくれます。読書案内も充実しています。
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『メディア文化とジェンダーの政治学 第三波フェミニズムの視点から』
田中 東子 著 (世界思想社 2012年)
学問としての「ジェンダー学」に興味が涌いた学生向きの中級書です。「女性ばかりが大変なわけじゃない。男性だって大変だ」と言われる時代でフェミニズムが持つ意義について、メディアに関わる具体例のもとに学ぶことができます。
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『部長、その恋愛はセクハラです!』
牟田 和恵 著 (集英社新書 2013年)
セクハラが社会問題とされるようになりしばらくたつにも関わらず、未だセクハラには社会的コンセンサスがないようです。それだけ、深く遠い社会の亀裂を浮き彫りにするセクハラ・・・。本書はその亀裂をあぶり出します。いまいちセクハラってよくわからない、という方には強く一読をお勧めします。
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『戦う姫、働く少女』
河野 真太郎 著 (堀之内出版 2017年)
わたしたちの多くが実際に観るか、あるいはなじみ深いポップカルチャー作品を題材に、女性主人公という切り口から社会的な了解事項を読み解いた一冊。アナ雪やエヴァンゲリオンといったなじみのあるストーリーやキャラクターについて読み進めるうちに、実は自分たちが生きるこの社会についての理解が深まります。
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『アマゾンの倉庫で絶望し、ウーバーの車で発狂した : 潜入・最低賃金労働の現場』
ジェームズ・ブラッドワース 著 ; 濱野 大道 訳 (光文社 2019年)
一見自由に見えるギグエコノミーの潜入ドキュメンタリーです。潜入してみることによって、仕事そのものを取り巻く環境だけでなく、そこに従事する人々の生活環境や課題が見えてきます。新自由主義の浸透がますます顕著な現代社会について理解する足掛かりにお勧めです。
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『境界なきフェミニズム』
チャンドラー・タルパデー・モーハンティー 著 ;菊地 恵子, 吉原 令子, 我妻 もえ子 訳 (法政大学出版局 2012年)
グローバルな問題に「ジェンダー」という概念がどのように応用可能か知りたくなったら読んでみてほしい本です。現在「ジェンダー」が問題化するのは女性問題に限定されない様々な格差です。過度の単純化に抗いながら複雑に絡み合う格差を考えるために参考になる中・上級者向けの本です。
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『ジャパン・イズ・バック : 安倍政権にみる近代日本「立場主義」の矛盾』
安冨 歩 著 (明石書店 2014年)
安倍政権批判の一冊ですが、そこで明らかにされる根源的問題としての「立場主義」は、現代日本に生きる私たちにも大いに内面化されているように思えます。現代日本・日本人論として読むと、日々感じる生きづらさの形が見えてくるかもしれません。
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『男尊女子』
酒井 順子 著 (集英社 2017年)
「女性差別は過去のこと。」「性差別を大げさにとりあげるのはカッコ悪い。」そう思うアナタに一読をお勧めします。「水面下」に隠れた性差別は意外にも女性にだってしっかり内面化されています。明るく笑える文体で、日々の出来事に潜む差別を可視化してくれます。
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『女子をこじらせて』
雨宮 まみ 著 (ポット出版 2011年)
大学に入り、社会的期待と自分自身との葛藤に悩まされることも増えたと思います。こうなることが期待されているといった思考から離れ、自分とは誰か、を考えるときに参考になる一冊です。人間「ありのままが一番おもしろい」ことを確認させてくれる、ジェンダー学のエッセンスが詰まった一冊です。
本学では所蔵していません。