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民秋 均 先生(薬学部)

 


2010年のノーベル化学賞は、鈴木/根岸/ヘック先生の三人に授与されることになり、日本人の有機合成化学に対する多大な貢献があらためて示された。同じ有機化学に身を置く者としてうれしく、2000年から6人もの日本人化学賞受賞者が輩出されたことは大変な慶事である。私の学生時代にも福井先生のノーベル化学賞受賞(1981年)があり、同じ大学での受賞でもあり大いに発奮させられたが、是非皆さんにも後を目指してもらいたいものである。
様々な一般科学雑誌(日経サイエンス化学現代化学など)でその受賞内容は説明されるので、詳細はそちらでみてもらうとして、この受賞内容を少し勉強してみたいという方には、少し専門的になるが(卒業研究生から大学院生レベルだが)【1】辻二郎『有機合成のための遷移金属触媒反応』(東京化学同人)をお薦めする。著者の辻先生も、今回の受賞分野でのパイオニア的な仕事をなされた方であり、中々うまくまとめられた一冊である。

私が有機化学をベースにして生命科学研究を目指していた学生時代に、木村先生の【2】木村資生『分子進化の中立説』(紀伊國屋書店)を読んで分子と進化との関わりの研究を是非したいと感銘を受けた(おかげで現在そのはしくれの研究をしています)。木村先生の研究も十分にノーベル賞に値すると思うが、生存者にしか授与されないために(1994年没)、日本はメダルを一つ損をしたと思っている。【2】木村資生『分子進化の中立説』(紀伊國屋書店)の内容は中々手強いが、是非くらいついて欲しい名著である。
少し判りやすくしたご自身の著になる【3】木村資生『生物進化を考える』(岩波新書)やお弟子さんの太田さんの手になる近著【4】太田朋子『分子進化のほぼ中立説 偶然と淘汰の進化モデル』(講談社)も理解の助けになるでしょう。

やはり、最先端の研究を行っている人が、一般の方にも判るように本を書くというのは、中々難しいことである。最近では、茂木さんや福岡さんがこなれた文章で、色々お書きのようであるが、大河内さんの【5】大河内直彦『チェンジング・ブルー 気候変動の謎に迫る』(岩波書店)はいい本である。地球温暖化という問題の基礎的な研究を触れるという意味でも、お薦めである(大河内さんとは海洋での光合成という分野で知り合いです)。
手前味噌だが、私も一般向けに少し判りやすく光合成絡みの話しを【6】光化学協会編『光化学の驚異 日本がリードする「次世代技術」の最前線』(講談社)に書いているので、ご興味がある方はどうぞ。
もう少し突っ込んだ人工光合成の今を知りたい方には【7】日本化学会編『人工光合成と有機系太陽電池 最新の技術とその研究開発』(化学同人)もお薦め(これまた一部を私が執筆しています)。

理系出身者というのは、一般書を書くのが下手なものであると思っていたが、瀬名さん(当時東北大の院生)の【8】瀬名秀明『パラサイト・イヴ』(新潮文庫)が出たときは、結構衝撃でした。生命科学研究者が、その自身の研究内容をうまくアレンジして推理小説を書くということが出来るなんて・・・。
理系出身者なら、東野さんが秀逸(大阪府大工出身)。近著の【9】東野圭吾『プラチナデータ』(幻冬舎)もDNAをベースにしており、科学を散りばめた内容をアレンジさせれば、まことにうまくまとめる人である。

科学を専門としなくても、化学的要素をうまく使った本を書かれる方がいるのだと感心したのは、【10】小川洋子『博士の愛した数式』(新潮文庫)を著した小川さんである。内容に、小さい頃ファンだった阪神タイガースのメンバーが出てくるあたりも、私には懐かしかった。

大学生になってからは、フットボールの虜になったが、今では忙しくてTV観戦もままならないのは残念。関学のヘッドコーチ(のちに学長・理事長)だった武田先生の【11】武田建『フットボールクレイジー 心理学者のスポーツ・コーチング』(タッチダウン)は、どのように仕事(研究や教育も)を進めるべきなのかを教えてくれた本である。就職活動前に読むと役立つのではないかな?立命の(元)ヘッドコーチにも是非本を著してもらいたいものである。ことを極めた人の文章というのは、含蓄のあるものであるといつも感心させられるので。

最後に、疲れたときには、【12】斎藤文一文、武田康男写真『空の色と光の図鑑』(草思社)がお薦め。写真も綺麗だし、その自然現象を判りやすくかつ科学的に説明してくれるところもいい。


『有機合成のための遷移金属触媒反応』
辻二郎著(東京化学同人  2008年)

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『分子進化の中立説』
木村資生著(紀伊國屋書店 1986年)

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『生物進化を考える』
木村資生著(岩波新書 1988年)

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『分子進化のほぼ中立説 : 偶然と淘汰の進化モデル』
太田朋子著(講談社ブルーバックス 2009年)

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『チェンジング・ブルー : 気候変動の謎に迫る』
大河内直彦著(岩波書店 2008年)

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『光化学の驚異 : 日本がリードする「次世代技術」の最前線』
光化学協会編(講談社ブルーバックス 2006年)

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『人工光合成と有機系太陽電池 : 最新の技術とその研究開発』
日本化学会編(化学同人 2010年)

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『パラサイト・イヴ』
瀬名秀明著(新潮文庫  2007年)

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『プラチナデータ』
東野圭吾著(幻冬舎  2010年)

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『博士の愛した数式』
小川洋子著(新潮文庫  2005年)

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『フットボールクレイジー : 心理学者のスポーツ・コーチング』
武田建著( タッチダウン  1988年)

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『空の色と光の図鑑』
斎藤文一文 ; 武田康男写真( 草思社 1995年)

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